はじめに

アクティブファンドはインフレ局面で有利?

恐らく、これから投資信託で資産運用を始めてみようと考えている人たちは、心のどこかで「どっちが有利なのか、答えを出してくれ」と思っているのではないでしょうか。

最近、「インフレ局面ではアクティブファンドが有利」という意見を耳にします。「インフレ局面では、価格支配力のある強い会社は値上げでき、利益や株価がインフレに打ち勝つが、多くの企業は値上げできず、利益や株価の上昇が難しい。だから企業を選別するアクティブ運用が有利」ということなのですが、本当でしょうか。

何となくもっともらしく聞こえるのですが、実はこの意見には何の根拠もありません。なぜなら、本格的なインフレ局面において、インデックスファンドとアクティブファンドのリターンを比較したエビデンスが存在しないからです。

投資信託の過去の歴史を振り返ると、日本で初めて日本株のインデックスファンドが登場したのは、1985年のことです。その後、バブル経済はあったものの、ほとんど物価は上がっていません。

消費者物価指数(生鮮食品およびエネルギーを除く総合)の前年同月比を見ると、1989年5月から1990年3月まで3%台で推移していますが、これは消費税が1989年4月から導入されたことに伴う影響が大部分を占めます。そして、その後はご存じのように長期にわたるデフレが続きました。

何が言いたいのかというと、少なくとも日本株を対象にした場合、「インフレ局面ではインデックスファンドよりもアクティブファンドが有利」であることを立証できるデータが、現時点では存在していないのです。そのうえで前出のような意見を述べているのだとしたら、それは単なる希望的観測であるとしか言いようがありません。

アクティブファンドの存在意義

百歩譲って、「インフレ局面ではインデックスファンドよりもアクティブファンドが有利」というのが本当だとしましょう。実際、少数ながらもインデックスファンドを上回るリターンを出すアクティブファンドがあるのは事実です。しかし、一番の問題は、どうすればそのようなアクティブファンドを見つけられるのか、ということです。

これははっきり言って無理です。少なくとも現状、開示されている情報だけで、アクティブファンドを運用しているファンドマネジャーの運用能力を第三者が評価することなど、まずできません。当たるも八卦、当たらぬも八卦といっては言い過ぎでしょうか。

その点、インデックスファンドは平均点狙いの運用ですから、アクティブファンドのように、外れのファンドを選んでしまうリスクを、ひとまず避けることができます。この一点において、インデックスファンドを選ぶ意味があるのです。

だとしたら、アクティブファンドには存在意義がないのでしょうか。

誤解を恐れずに申し上げるなら、アクティブファンドはより高いリターンを期待して買うものではないのかも知れません。いささか端折った言い方で恐縮ですが、アクティブファンドは長期保有が大前提になります。そのためには、長期保有できる仕掛けが必要です。投資哲学に共感でき、かつ長期保有できる仕掛けを持っているかどうかが、アクティブファンドの存在意義ではないのかと思うのです。

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