はじめに
2024年も年の瀬が近付き、「IPO(株式の新規上場)ラッシュ」の季節がやってきました。今年のIPO市場はいま一つ盛り上がりに欠ける状況が続いています。しかし、今年のIPOラッシュでは、有望なIPO銘柄をバーゲン価格で仕込む千載一遇のチャンスとなるかもしれません。今回は、その理由をお話しましょう。
連続の大型新規上場で他のIPO銘柄に資金が回らない可能性
例年、12月はIPOが多いことで知られています。その理由は、「日本は3月に通期決算、5月頃に株主総会が行われるケースが多く、株主総会を終えてからIPO申請を行うスケジュールでは、審査の期間を経て12月にIPOが集中しやすくなる」ため。ほかに、「年末年始は休業する企業が多く、IPOの事務手続きの関係から年内中に上場したいという意図が企業側に働きやすい」ことなどが挙げられます。
IPOの手続きには時間と手間がかかるため、企業としても年末年始をまたぐのは避けたいところ。実際、2014年以降、1年間の総数に占める12月IPOの比率は、新興市場の下落など特殊な要因で件数が少なかった年を除くと、おおむね1年間の総数の2~3割程度と高くなっています。母数が多い分、他の月より株価の大化けが期待される銘柄が散見されるため、個人投資家のIPOに対する注目度も上昇する傾向があるのです。その時期は「IPO祭り」などと呼ばれ、賑わいを見せることもしばしばです。
もしかしたら、2024年はそうしたIPO株を安く買うチャンスかもしれません。というのも、2024年10月~2025年3月にかけて大規模なIPO案件が相次ぐため、1つのIPO銘柄に十分な資金が向かわなくなる可能性があるからです。
IPOへの投資は、将来の大化け株への期待が高まる分野です。それは、将来有望であるにも関わらず、まだ知名度が低く、買おうと考える投資家が少ないため。初値を付けた後に株価が急落する、いわゆる「初値天井」となるケースが少なくないことや、上場後しばらくは株価の値動きが荒くなりがちであることなどから、ハイリスクな投資としても知られています。
IPOによる資金調達額の合計を見ると、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険という大規模上場があった2015年と、ソフトバンク(※携帯電話事業)が上場した2018年を除くと、おおむね500~1400億円程度にとどまります(年間で数百億円程度の少ない年も珍しくありません)。要は、IPO市場に流れるお金の上限が、だいたい決まっているということ。経済・金融情報大手の米ブルームバーグの集計によると、2014年以降、1000件以上のIPOが行われ、そのうちの90%近くが資金調達額ベースで1億ドル(約150億円)未満にとどまったそうです。小粒な銘柄が多い一方、その年のトレンドに乗っている銘柄に人気が集中するケースも珍しくありません。