はじめに
扶養を外れて社会保険料を自分で納めるメリット
扶養内だと「夫の健康保険に無料で加入でき、かつ国民年金保険料の支払いも免除された上で将来の年金受給資格を維持できる」状態で働くことができます。社会保険料の負担がないことが最大のメリットになるため、一見魅力的にみえますが扶養内でいることと、自分で社会保険に加入して保険料を納めるのとでは「保障」の部分で大きく差が生じます。
自分で社会保険料を納めることで得られるメリットは次の2つです。
①将来の年金額が増える
②医療保障が充実する
①は厚生年金に加入することになるため、老後に受け取れる年金額が扶養内で働いた場合に比べて増えます。また、遺族年金や障害年金も厚生年金から支給されるため、万が一の場合の備えが手厚くなります。
②は怪我や病気で一時的に働けなくなった場合の傷病手当金や出産のために休んだ期間の収入を補う出産手当金が支給されます。収入の心配をすることなく、安心して休業することができるのです。
扶養内で働いている時はこのような保障はありません。社会保険に加入して保険料を納めることで保障が充実してくるため、手取りの増減だけを見て判断するのではなく、長期的な視点で得られる収入を比較したり生活の安定性を考慮したりすることが重要になります。
何より自分で社会保険を払って仕事をしているという経済的自立が、想像以上に自分の“自信”に繋がったというお声もよくいただきます。扶養を外れて、自分で社会保険を収め始めることで、自身の働き方について、今までにはない視点が手に入るかもしれませんね。
扶養内・扶養外の選択で変わる働き方と総収入
同じ年収115万円でも、扶養を外れて社会保険に加入すると手取りが15万円減少し、扶養内の年収105万円に抑えて働いたとしても、元々扶養を外れる前にあった手取りよりも9万円減少することになるとお伝えしました。
以下のグラフは、Aさんが35〜59歳の定年まで働いた時の手取りと65〜90歳まで支給される年金の総額を示したものです(年金の計算をする際、34歳までは厚生年金ではなく国民年金を支払っていたと仮定します)。
画像:筆者作成
年収115万円で扶養から外れると、扶養内の時と比べて手取りは少なくなりますが、厚生年金の上乗せがあるため総収入は扶養を外れた方が上回る形になります。ただし、これは将来を見据えた結果であるため、Aさんの家計で年収115万円の扶養内で働いていた時と同じ手取りが必要な場合は、年収134万円で働かないと同じくらいの手取りにはなりません。(表1参照)
では、年収115万円と年収134万円の働き方にはどのような差があるのかを確認してみましょう。Aさんが平日5日、東京都の最低賃金1,163円でパート勤務していたとすると、年収115万円の場合の1日の勤務時間は4.1時間です。同じ勤務条件で年収134万円で働くとなると、勤務時間は4.8時間になります。1日0.7時間働く時間を増やすことができるのであれば、扶養内で働いていた時と同じ手取りで、かつ将来の年金や医療保障が充実した環境で安心して働くことができます。
もし、働く時間をこれ以上増やすことができないのであれば、時給が高い仕事に変える方法もあるでしょう。同じ平日5日で4.1時間勤務する場合、時給が1,362円だと年収134万円になります。このように、同じ年収であっても働く時間や時給の条件を変えることで働き方を各家庭の状況に合わせて調整することが可能です。