はじめに
相次ぐ自然災害の頻発で火災保険の保険料率がアップしています。日用品の物価高に追い打ちをかける家計に厳しい値上げです。災害があると大きな損害額となる火災保険は安易に補償金額を下げるのは避けたいところ。
改定により多くの場合は値上げとなりますが、見直しをすることで保険料削減になる場合もあります。改定の背景や見直しのメリット、そして実際に保険料を削減できた事例を紹介します。
火災保険料改定の背景
損害保険の保険料率は、事故が発生した場合に支払われる保険金に充てられる「純保険料率」、保険会社が保険事業を行うために必要な経費に充てられる「付加保険料率」の合計で成り立っています。
ふたつの保険料率のうち「純保険料率」は、損害保険料率算出機構が算出する参考純率をもとに、保険会社独自の補償内容などを加味して作成されます。そのため、保険会社ごとに保険料は若干変わりますが、参考純率が上昇傾向にあれば、保険会社の保険料率も当然アップすることになります。
損害保険料率算出機構は2023年6月に参考純率の改定届出を金融庁長官に行い、6月28日に改定を公表しています。
改定の概要は、以下の2点です。
- 住宅総合保険の参考純率について、全国平均で13.0%引き上げる
- 水災に関する料率を地域のリスクに応じて5区分に細分化する
改定の背景は、損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内」に以下のように明記されています。
- 自然災害などによる保険金支払いの増加とリスク環境を踏まえた対応
- 水災料率における契約者間の保険料負担の公平化など
画像:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内」より抜粋
上表で示したような大きな災害が頻発していることに加えて、修理費にかかる資材費、労務費等の高騰が影響していますので、保険料のアップはやむを得ないと思われます。
保険料率以外の改定
保険料率以外にはどのような改定があるのでしょうか。損害保険では、自動車保険ですでに行われているように細分化の流れが進んでいます。運転するひとの免許の色、年齢、所有している車の種類などで、保険料が変わる仕組みです。火災保険でもすでに導入されており、建物の構造、所在地、築年数などで保険料が変わります。
今回の改定で、改定前は全国一律だった水災保険料が地域によってリスク区分が設けられました。水災保険料率は、リスクが高い地域と小さい地域で最大1.5倍の差をつけている所もあります。
また、築年数料率も、さらに細分化が図られ、今まで築25年以上は一律だった区分が1年ごとに保険料率が変わるように改定された保険会社があります。基本保険料率は上がっても、このような細分化の関係で、保険料が安くなる可能性もあります。具体的な事例を見てみましょう。