はじめに
グラノーラ、タピオカ、高級食パン…。こういった食品ブームが起こったときには、必ずといっていいほど株価が暴騰する銘柄があります。
グラノーラはカルビー(2229)、タピオカは神戸物産(3038)、高級食パンは、OSGコーポレーション(6757)。ブームの恩恵を受ける銘柄をいち早く見つけた先回り投資は、投資家冥利につきます。
じつは今、次の食品ブームがじわじわと起きています。それに気づいたのは、6月に発売された四季報夏号のイーサポートリンク(2493)の記事欄でした。「【開拓】農業支援は東南アジアの焼き芋ブームでサツマイモ販売に注目」とあり、「焼き芋ブーム?」とページをめくる手が止まりました。
アジアに広がる焼き芋ブーム
イーサポートリンクは、生鮮青果の流通業界向けに生産物のデータ管理、受注、売り掛け・買い掛け管理等の業務代行システムを行う開発会社で、イオングループ向けに強いのが特長です。メインの事業はオペレーション支援ですが、サブの農業支援事業で、焼き芋ブームに目をつけたようです。ただ、当社は時価総額50億円に満たない企業なので「へぇ~」程度で流していたのですが、最近、ドン・キホーテの焼き芋がめちゃくちゃ売れてる!というYouTube動画を発見し、やっぱり来てるのか!!と慌てて調べてみました。
じつはドン・キホーテは、10年以上前から焼き芋の販売をしていますが、最近は、10分に100本ベースで売れ、年間約12.3億円(2023年1~12月国内実績)売れるヒット商品となっています。その理由は、海外旅行者の焼き芋ラブ!があるようです。ドン・キホーテで扱っている焼き芋は、ねっとりと甘い「紅はるか」を使用していますが、海外ではこれほど甘いさつまいもはないため、その甘さに驚きを感じるようです。
さらにドン・キホーテでは、焼き芋関連のPB商品として、「焼き芋のお酒」「焼き芋アイス」「焼き芋大福」「焼き芋スプレッド」などを投入。2024年9月には、「紅はるか」をペースト状にし、タルト型の乗せた「焼き芋タルト」を発売し、大人気となっています。
焼き芋ブームは、日本だけではなく、タイやシンガポールなどアジアにも広がっています。その火付け役は、やはりドン・キホーテ! 海外では「DON DON DONKI」という名前で展開しており、シンガポールでは行列ができるほどで、国内の1店舗あたりの平均の15倍の本数を売り上げたこともあるそうです。
日本では焼き芋といえば、寒い季節に食べるイメージなので、タイやシンガポールなど暑い国でも人気なのは不思議な気がしますが、そんな常識にとらわれずヒットさせるドンキはさすがです。
余談ですが、現在の焼き芋ブームは、なんと第4次ブームで、第1次ブームは、文化・文政期(1804年)から明治維新(1868年)まで、第2次ブームは、明治時代~関東大震災(1923年)まで、第3次ブームは、第2次世界大戦後1951年に石焼き芋の「引き売り屋台」が考案されたところから、ファーストフードが登場する1970年まで。そして、現在の第4次ブームに至ります。このブームが、どこまで拡大するか。わたしの肌感では、原宿の竹下通りに焼き芋専門店ができたら、ですが、今のところまだ、のようです。
ドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナル(7532)は、年間売上高が2兆円を超す大企業ですので、焼き芋のヒットが全体に及ぼす影響はそれほど大きくありません。株価が、焼き芋ブームで10倍になるかといわれれば、さすがにそれはイメージしづらいというのが本音です。ただ、焼き芋を目当てに店舗を訪れた人が、ついでにいろいろ買っていくことで、全体の売り上げが伸びるということは十分に考えられそうです。