はじめに

株式投資において、個別株を購入する際には、企業の財務状況や業績を正確に評価することが成功の鍵となります。しかし、企業が公表する数多くの財務データの中から、どの数字に注目すべきか、またそれらをどのように解釈すべきかは、投資家にとって難しい課題です。本稿では、投資家が企業分析を行う際に注目すべき主要な数字と、その見方・活用方法について詳しく解説します。


数字をすべて完璧に理解する必要はありません。まずは、売上や利益が増加しているか、PERやPBRが適正範囲にあるかだけでも十分な判断材料になります。配当利回り狙いであれば配当利回りも忘れずに。

慣れてきたらそれ以外の指標もチェックするようにしてみましょう。

1つの指標だけで判断せず、複数の数字を見て総合的に評価しましょう。加えて配当重視なのか、成長重視なのかによって見るべき指標が変わります。これらを意識することで、初心者でも効率的に企業を分析し、良い投資判断ができるようになります。

1.売上高(Revenue)

売上高は、企業の事業活動によって得られた総収入を示す基本的な指標です。売上高の増加は、市場シェアの拡大や需要の高まりを反映しており、企業の成長性を示す重要な要素です。人間でいうと身体が大きくなっていくというイメージでしょうか。特にグロース市場では売り上げ成長が重要ですし、売上高が連続して増加している企業は、安定した顧客基盤や新規市場への進出など、積極的なビジネス展開を行っている可能性があります。

2.営業利益と営業利益率、経常利益

営業利益は、売上高から売上原価や販売費、一般管理費などの営業活動に直接関連する費用を差し引いたものです。これは、企業の本業による利益を示すため、経営の効率性を評価する上で重要です。営業利益率[売上高営業利益率(%)= (営業利益 ÷ 売上高) × 100]を分析することで、売上に対する利益の割合を把握できます。この比率が高いほど、コスト管理が優れており、収益性が高いことを意味します。

経常利益[=営業利益+(営業外収益-営業外費用)]は企業が事業を行って得た利益のことを指します。本業における利益のみならず運用利益などのその他の損益も含んだ数字を指し、どのくらい稼げるかを示すものです。営業利益進捗率にもぜひ注目していただけると投資の参考になるのではないかと思います。

3.純利益と純利益率

純利益は、営業利益から金融収支や特別損益、税金などを差し引いた最終的な利益です。純利益率[売上高当期純利益率(%)=当期純利益÷売上高×100]は、企業が売上からどれだけの最終利益を得ているかを示します。純利益が安定して増加している企業は、財務の健全性が高く、株主への還元余地も大きいと考えられます。

4.一株当たり利益(EPS)

EPS(Earnings Per Share)は、企業の純利益を発行済み株式数で割ったもので、一株あたりの利益を示します。EPSが高い企業は、株主にとっての利益が大きいと評価されます。また、EPSの成長率を追跡することで、企業の利益成長性を評価できます。EPSが継続的に増加している企業は、将来的な株価の上昇が期待できるかもしれません。特に米国企業の決算では収益とともに注目される数字です。

5.株価収益率(PER)

PER(Price Earnings Ratio)は、株価をEPSで割ったもので、株価が一株当たり利益の何倍になっているかを示します。PERが高い場合、市場がその企業の将来の成長性に高い期待を寄せていると解釈されます。しかし、PERが高すぎると過大評価されている可能性もあるため、同業他社や市場平均との比較が重要です。

6.株価純資産倍率(PBR)

PBR(Price Book-value Ratio)は、株価を一株当たり純資産(BPS)で割ったもので、株価が純資産の何倍になっているかを示します。PBRが1倍以下の場合、株価が純資産よりも低く評価されていることを意味し、投資家から割安と判断されることがあります。ただし、業種によって適正なPBRは異なるため、業界平均との比較が必要です。2023年3月末に東京証券取引所は上場会社を対象に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を実施しましたが、そのなかでPBR1倍割れは資本コストを上回る資本収益性を達成できていない、あるいは成長性が投資者から十分に評価されていないことが示唆される1つの目安とされています。

7.自己資本利益率(ROE)

ROE(Return on Equity)は、純利益を自己資本で割ったもので、株主が投資した資本に対してどれだけの利益を生み出しているかを示します。ROEが高い企業は、株主資本を効率的に活用して利益を上げていると評価されます。経済産業省が公表した通称「伊藤レポート1.0」ではROE8%以上を最低限の目標として日本企業に求めており、一般的に、ROEが10%以上であれば優良企業とされます。

8.総資産利益率(ROA)

ROA(Return on Assets)は、純利益を総資産で割ったもので、企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出しているかを示します。ROAが高い企業は、資産の効率的な活用ができている、効率的な経営ができている企業だと判断されます。ROAとROEを併用することで、企業の財務レバレッジの影響を評価できます。

9.配当利回り

配当利回りは、一株当たりの年間配当金を現在の株価で割ったものです。高配当の企業への投資は安定した配当収入を求める投資家にとって魅力的で人気がありますね。ただし、高配当が持続可能かどうか、配当性向(純利益に対する配当金の割合)が高すぎないかを事前に確認することが重要です。

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