はじめに

身近に子供がいない人でも、「瞬足」という名前を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。その名の通り、“速く走れるスニーカー”として小学生やその母親に口コミで広がり、2000年代半ばに爆発的なヒット商品になりました。

それから10年余り、瞬足は今どうなっているのでしょうか。発売元であるアキレスを直撃しました。


「ニンテンドーDSか、瞬足か」

少子化で縮小の一途をたどる子供靴市場。そんな中で爆発的なヒットを記録したスニーカーがあります。2003年、小学校低学年の男の子をターゲットに発売した「瞬足」です。

2005年に年間販売足数が150万足を超えると、一気に人気に火がつき、一時的に手に入りにくい状況になりました。そのため、当時は量販店のバイヤーから「ニンテンドーDSか、瞬足か」と声をかけられるほどだったと、アキレス・シューズ営業本部の津端裕・副本部長は話します。

その後も順調に売れ行きを伸ばし、2009年には年間販売600万足を叩き出す大ヒットシューズに成長。「3~12歳の人口は約1,100万人。単純計算すると、園児から小学生の2人に1人が履いていたことになります」(津端さん)。

ブームに火をつけたのは、“転ばない仕組み”です。瞬足といえば、文字通り速く走れるとイメージしがちですが、「速く走るために作ったわけではないんです」と津端さん。走るのが苦手な子が転ばずに走れるように、という思いで開発したと話します。

それを実現したのが、左足の外側と右足の内側にスパイクを配置した左右非対称のソールです。運動会の徒競走で左回りのコーナーを駆け抜けるときに、左右対称のソールよりもグリップ力が上がり、すべらない仕掛けになっているのです。

瞬足の生みの親である津端さんは、現在まで18年間にわたって小学校の運動会に足を運び、生徒ほぼ全員の子供靴の写真を撮り続けながら、研究を重ねてきました。「発売1年目は1足しか見かけなかった瞬足も、ブーム全盛期は1~4年生の6割近くが履いていました」(津端さん)。

不振のシューズ事業を支える瞬足

ただ、瞬足の発売から14年が経った今、アキレスのシューズ事業は不振が続いています。2016年度の事業売上高は177億円、前年比で8.7%減少しています。飛ぶ鳥を落とす勢いだった瞬足ブームが去ったということなのでしょうか。

「瞬足は2012年以降、現在も変わらず毎年500万~600万足売れています」(津端さん)。ブームのピークから12年が過ぎた今も、瞬足は販売足数を大きく落とすことなく、子供たちの定番シューズとしてしっかり浸透していました。

シューズ事業の不振は、「ECCO」「スケッチャーズ」といった海外ブランドのライセンス契約が終了した影響が大きいといいます。

昨年、瞬足の販売足数は累計6,000万足を超えました。その売れ行きに弾みをつけているのが、コラボシューズです。津端さんは「瞬足の新しい在り方」だと語ります。

今年10年目を迎える瞬足の三越伊勢丹限定モデル

中でも、今年で10年目を迎える三越伊勢丹とのデザイナーコラボ企画は、毎回、目を見張る売れ行きを記録します。百貨店仕様にデザインされた瞬足は6,804円(税込み)からと、通常より3,000円以上高く価格設定されているにもかかわらず、伊勢丹新宿店では店頭に出したら1週間で完売したそうです。祖父母が孫のために購入するケースが多く、「伊勢丹新宿店の子供靴で一番売れる商品だといわれています」(津端さん)。

そのほか、グローバルワークやチャオパニックティピーなどのファッションブランドともコラボ商品を展開。日本の運動会の風習が今も残っている台湾や、香港でも人気だといいます。

次のミッションは「上履き」

大ヒットを記録した瞬足の次の展開は「上履き」です。足の正しい育成を促す“足育”の啓蒙活動の一環で全国を回る中、ある母親から「上履きをなんとかしてください」と声をかけられたところから開発が始まりました。

学校生活で一番長く履き、体育館での運動などでも使用する上履き。「子供の足は成長によって形が変わるのに、30~40年前と変わらない設備で作り、ずっと同じ形でいいはずがありません」。津端さんは上履きの概念を変えるために立ち上がりました。

来年2月に発売される瞬足の上履き「SSK 1010 W」

瞬足で培った経験を基に作った上履きの価格は2,300円(税抜き)から。通常、上履きは500円ほどです。それでも「子供の成長に対応できる靴の設計には、その価値があります」と津端さん。

この上履きには、足の自然な動きに合わせて屈曲するなど、子供の足にできるだけ負担がかからないような設計が取り入れられています。来年2月の発売を前に、早くも伊勢丹新宿店での取り扱いが決まりました。

津端さんは瞬足を開発した当時をこう振り返ります。「瞬足の前に展開していたブランドは、売り上げが下降線をたどりました。落ちるところまで落ちたら、怖いものはありません。ここまで落ちたら新しいことをやるしかありませんから」。その思いが、転ばないための新しい仕掛けと、今までにない斬新なデザインを施した瞬足を誕生させました。

「瞬足は愚直に、まじめに、きっちり作っています。子供靴の設計では誰にも負けません」と津端さんは力を込めます。開発者の子供靴にかける思いが生み出した瞬足は、まさに“子供靴の陸王”なのかもしれません。

(文:編集部 土屋舞)

[PR]NISAやiDeCoの次は何やる?お金の専門家が教える、今実践すべきマネー対策をご紹介

この記事の感想を教えてください。