はじめに
有力外国人選手が日本のレベルを引き上げた
実際に当時の国際試合を見ると、その実力差は歴然でした。
海外の競合国はパスを受けるとそのままダイレクトにパスをつなげて前線にボールを運んでいくのに対して、当時の日本代表(まだキングカズが代表入りするかしないかという頃の話です)は、パスを受けると必ず1~2回ドリブルをして体勢を整えてから次のパスを出す。対戦相手にはその間に距離を詰められてボールを奪われてしまう。そんな時代だったのです。
ところが1993年にJリーグが開幕すると、この状況が一変します。特にJリーグ開幕当初はバブル的な人気があったことから、各スポンサー企業が力を入れて世界の有力選手を呼び寄せました。この時期に、リネカー、ジーコ、ビスマルク、レオナルド、スキラッチといったワールドカップで大活躍するレベルの大物がJリーグにやってきたのです。
高いレベルでプレイする彼らが日本サッカーの実力を引き上げたのは間違いありません。一方で、このようなバブルは数年で落ち着き、今では世界のサッカーを体験するためにJリーグの有力選手が欧州に移籍する時代に戻ってしまいました。
今回、巨額な配分金がクラブチームに入るようになったことで、ひょっとすると有力なサッカー選手がまた次々と来日するという新たな流れができるかもしれません。
それにしてもなぜ、巨額な資金がJリーグに入って来たのでしょうか。
今、世界のスポーツに集まる巨額マネー
実は巨額のマネーが入り込んできたのはJリーグだけではありません。今、世界のスポーツコンテンツには新しいバブルが到来しているのです。
それはスマホに対するコンテンツ配信です。Jリーグの新スポンサーになったDAZNは世界的なスポーツコンテンツの配信企業です。その放映権契約は10年で約2,100億円。
そして世界のスポーツの放映権は、Jリーグ以上に加熱しています。
たとえば野球。日本の場合は地上波各局がプロ野球の放送を取り止めるなど、人気がいまひとつぱっとしませんが、グローバルに売れるメジャーリーグは放映権が人気で、コンテンツとしての価格が高騰しています。
その差を理解するためには、選手に支払われている年俸を比べるとわかりやすいでしょう。メジャーリーグの平均年俸は、日本のプロ野球選手の最高年俸と同じ。つまりメジャーリーグのレギュラーで下位打線を打っている選手と、日本の大谷翔平(エンゼルスに移籍)、筒香嘉智といった有力選手の報酬が同じということなのです。
今、世界中の一般消費者が動画配信をスマホで見ることが普通の生活習慣になってきました。そしてスポーツはスマホで見るのにとても適したコンテンツです。なにしろ場所と時間を選ばずに楽しめるのですから。
世界全体に広がったスマホがプロスポーツの価値をバブル状態に引き上げ、その影響でJリーグのクラブチーム間にもマネー格差が広がった。実はこんなメカニズムが起きていたというのが、今回のニュースの背景だったのです。