はじめに

2024年11月19日、KADOKAWAがソニーグループによる買収協議の報道を受けて株価が急騰。しかし、その後の第三者割当増資の発表で急落しました。このような急騰急落時に、投資家はどうするのがよいのか、その背景と対応策を解説します。


KADOKAWA株の急騰急落はどのように起こった?

11月19日、ソニーグループ(6758)が、KADOKAWA(9468)の買収に向けた協議に入ったと報道されました。もともとソニーグループは、KADOKAWAの株式を約2%保有しているほか、KADOKAWAの子会社にも出資をしており、両者は非常に親和性の高い関係にあります。

ソニーグループは、ヒット作の有無で業績が大きく左右される収益構造を改善したく、コンテンツを多く抱えるKADOKAWAを買収できれば、まさに鬼に金棒といえます。ここ数年で、日本の作品やアーティストに対する海外からの注目は、かつてないほど大きくなっています。KADOKAWAとのマリアージュにより、ソニーが再び世界でトップ企業と呼ばれる日が来るかもしれません。

19日の取引時間中にこの報道が伝わり、KADOKAWA株は制限値幅いっぱいのストップ高となり、前日比23%高の3,745円で取引を終えました。ソニー株は1%高で終えています。買収する側は費用がかかりますので一時的に利益が圧迫されます。一方で、買収される側は、ほとんどの場合は、現在の株価より高い株価で買い取ってくれますので、それを期待して株価が急騰するのは当然といえます。

しかし、12月19日にソニーグループがKADOKAWAを買収するのではなく、第三者割当増資を引き受けると発表。これによりKADOKAWAの株式を10%持つ筆頭株主になりますが、既存の株主から株を買い取るわけではないので、買収を期待していた株主にとっては、まったく聞きたくなかったお知らせです。発表があった翌日、KADOKAWAの株価はストップ安、翌々日も前日比15.6%安で、結局買収されるかもというニュース報道がある前の株価まで行ってこいとなりました。買収を期待して高値で飛びついた投資家は、地団駄を踏んでいることでしょう。

ニュースに振り回されないためには

では、このような報道があった場合、投資家はどう行動するべきなのでしょう? 

株式市場には「噂で買われ、事実で売られる」という言葉があります。企業買収や、業務提携、経営統合などのニュースは、投資家の期待を煽り、株価を一時的に押し上げる傾向があります。さらに、SNSの発達により未確認情報が拡散されたり、AIやアルゴリズムが特定のキーワードに反応して、大量の注文を出したりすることにより、株価の急変を助長します。そこに、「今買わないと乗り遅れる!」と焦る群集心理が乗っかると、株価は常識を超えて動いてしまうのです。

こういったニュースに振り回されないためには、まずは「冷静」であるべきです。SNSやネットニュースではなく、公式発表を確認しましょう。今回の場合、11月20日にKADOKAWAは「一部報道について」というお知らせを出しています。

内容は、
・「報道は当社が発表したものではない」
・「初期的意向表明は受領しているが、決定事項はない」
といったものです。

11月19日の報道後、多くの投資家が「今買わなければ利益を逃す」という心理にかられました。しかし、公式発表を待ってからでも十分に対応はできたはずです。もし、翌日の公式発表を確認していれば、急騰した高値で買ってしまうことは避けられたでしょう。

もちろん、このあと正式に買収が決定する可能性もありますが、実際そうなったとしても、すでに株価は急騰しているので、そのニュースは織り込んでいることになります。実際に買収が発表されたとしても、ここからさらに上昇する可能性は低く投資妙味にかけます。

投資管理もマネーフォワード MEで完結!配当・ポートフォリオを瞬時に見える化[by MoneyForward HOME]