はじめに
運用会社の倒産はなくても事業撤退は起り得る
では現実問題として、運用会社の倒産は起り得るものなのでしょうか。
少なくとも今までは、この手のケースはほとんどありませんでした。なぜなら大半の運用会社が、国内大手金融機関の子会社、もしくは外資系運用会社の日本法人として、日本国内で投資信託ビジネスを展開していたからです。豊富な資本力を持った親会社が背後にいれば、赤字続きでも親会社からの追加資本が期待できますし、そもそも大手金融機関のブランドがある以上、子会社だとしてもそう簡単に倒産させたりはしないでしょう。
また投資信託ビジネスが軌道に乗らない運用会社でも、なかには法人マネーや機関投資家マネーの運用を受託しているところがあります。この手の運用会社は、投資信託以外の資金も運用して運用報酬を得ているため、仮に投資信託ビジネスが不調だとしても、事業を継続させる体力があると考えられます。
問題は、法人マネーや機関投資家マネーの運用を一切、受けることなく、個人向け投資信託の運用に特化しているような独立系投資信託会社です。
もちろん、さわかみ投信のように4000億円規模の運用資産があれば、そこから得られる運用報酬で十分、経営を成り立たせられますが、運用資産が極めて小さく、しかも大きく増える見込みがない運用会社の場合、倒産とまではいかなくても早晩、投資信託ビジネスから撤退などということも起こらないとは限りません。
運用会社の財務諸表をチェックする
過去、日本国内で投資信託ビジネスを行っていた運用会社の撤退が2ケースありました。ムーンライトキャピタルと、あいグローバル・アセット・マネジメントのそれです。とはいえ両社とも投資信託ビジネスから撤退せざるを得なくなった一番の原因は、業績悪化ではなく、金融庁からの業務改善命令に従わなかったため、行政処分でライセンスを取り消されたからです。
ただ、2025年9月末に投資信託ビジネスから撤退する予定のPayPayアセットマネジメントは、業績悪化を主因として自ら事業撤退を決めた初めてのケースになります。「業績悪化による事業撤退」というケースができたことで今後、投資信託ビジネスが軌道に乗らない一部の運用会社において、投資信託ビジネスから撤退する動きが出てくる恐れは十分にあります。
NISAなどで投資信託の長期投資を行う場合、ファンドの運用成績だけでなく、運用会社の業績もしっかりチェックする必要性が高まってきそうです。運用会社の大半は非上場企業ですが、近年では自社のホームペ―ジに財務諸表を掲載し、誰でも閲覧できるようにしている運用会社も増えてきています。それをしっかりチェックして、運用会社を選ぶようにして下さい。
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