はじめに

会社員でも確定申告した方がいい場合

最後に、会社員でも確定申告することで、払い過ぎた税金が返ってくるケースを解説していきます。

①住宅ローン控除
住宅ローンを利用してマイホームの新築・増改築等をして、一定の要件(借入期間
や所得、床面積要件等)を満たすときには、所得税の減税を受けることができます。1年目は確定申告が必要ですが、2年目以降は会社の年末調整で適用することが可能です。

控除額の目安としては、住宅ローンの年末時点の借入残高の0.7%(上限あり)が、最大13年間にわたって所得税から控除されます。申告する場合には、金融機関から交付される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」や家屋の「登記事項証明書」など必要とされる書類がありますので事前に確認しましょう。

また、住宅ローンの適用要件は、物件が新築か中古かによって異なります。特に中古物件の場合には、新築と異なり、築年数や耐久性、安全性の問題もあるため購入前に控除対象となるかしっかり確認することが重要です。

②医療費控除
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が10万円(またはその年の総所得が200万円未満の方は、その5%の金額)を超えた場合に適用できる控除です。本人だけでなく生計を一にする配偶者や親族の医療費も合算できます。大きな手術や出産費用などがあった場合は対象となる可能性があります。

医療費控除の金額は、〈実際に支払った医療費の合計額-保険金等で補填される金額〉-10万円(または総所得の5%) で計算した金額となります。対象となる医療費の例としては、病院の診察・入院費用、処方箋による薬代(市販薬は対象外)、通院のための公共交通機関の交通費(原則タクシー代は対象外)等が該当します。

また、通常医療費控除は年間10万円以上の医療費が対象となりますが、セルフメディケーション税制を活用することで少額であっても控除を受けることができます。セルフメディケーション税制とは、健康維持や病気の予防に努めている人が対象となり、市販薬を年間1万2,000円以上購入した場合、所得控除を受けることができる制度です。こちらの制度は病院にかかるより市販薬を活用している人向けの税制となります。ただし、医療費控除とセルフメディケーション制度は併用できません。

③寄附金控除(ふるさと納税を含む)
寄附金控除とは、ふるさと納税や特定の団体(認定NPO法人・赤十字など)への寄付を行ったときに適用される控除です。

ふるさと納税は、地方公共団体への寄付金として確定申告における寄附金控除の対象となります。寄付額から2,000円を引いた金額が所得税と翌年度の住民税から控除されます。ワンストップ特例制度(ふるさと納税先の自治体数が5団体以内の場合利用可)を利用すれば、原則確定申告は不要です。

しかし、ふるさと納税先の自治体が6団体以上、2箇所以上から給与等の支払いを受けている、年間給与収入合計が2,000万円以上、給与所得以外の所得があるといった要件に該当すれば、確定申告が必要になります。

④雑損控除
雑損控除とは、災害や盗難、横領などによって資産に損害を受けた場合に適用される控除です。例えば、台風や地震で自宅が損壊した、空き巣被害にあったなどが該当します。確定申告をしなければ適用されないため申告を忘れないようにしましょう。申告には罹災証明書などの書類が必要になります。

⑤株式や投資信託の売却益と損益通算、損失の繰越
株式や投資信託を特定口座(源泉徴収なし)や一般口座で保有し、かつ売却益が出れば、確定申告が必要です。

特定口座(源泉徴収あり)で売却益が出れば、確定申告は原則不要となります。しかし、複数の金融機関で株式や投資信託の売却損益が出れば、確定申告することで税金が還付されます。例えば、A証券会社で50万円の利益、B証券会社で30万円の損失があるケースでは、確定申告をしないとA証券会社の50万円に対して税金が引かれています。確定申告することで課税対象を20万円(利益50万円-損失30万円)に減らすことができます。また、株や投資信託でその年に損失が発生すれば、確定申告することで損失を最大3年間繰越すことも可能です。

会社任せにせず必要なら確定申告を活用しよう

会社員は年末調整で税金の精算が完了することが多いですが、一定の条件に該当すれば、確定申告が必要になります。また、確定申告することで払い過ぎた税金が戻ってくるケースがあります。

多忙な日々の中で、確定申告をすることは手間のかかることかもしれません。しかし、正しい税務知識を持つことは自分自身を守ることに繋がります。また、申告することで恩恵を受けることもできます。確定申告をしなくてもよいと思い込まず、自分の状況を確認し、メリットを最大限に活用しましょう。

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