はじめに
アクティブ運用を主としている運用会社が、「アクティブ運用はインデックス運用に比べてインフレに強い」と主張しています。考えてみれば今は、デフレ経済からインフレ経済への転換点にあり、その言葉を聞いて気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日本はインフレ経済に移行?
インフレとは、物価が上昇する現象です。日本は2年くらい前まで、モノの値段がなかなか上昇しない、深刻なデフレ経済でした。過去を遡ると、1990年代に入ってからバブル経済が崩壊し、消費者物価指数の前年同月比が徐々に低下して、1995年5月に、統計が 存在する1971年1月以来初めて、マイナスに転じました。
この時は4カ月間、前年同月比でマイナスが続いたものの、そこからしばらくはプラスに転じました。そして、デフレ経済が深刻化したのが、1999年10月からで、2007年10月までの8年間にわたり、物価は下がり続けました。その後、一時的に回復したものの、極めて低い上昇率に止まり続け、2009年5月から2013年7月まで、再び前年同月比マイナスになったのです。
2013年8月からは日銀による量的・質的金融緩和によって徐々に物価はプラスに転じますが、上昇率は日銀が目標にしていた2%には遠く、1%を下回る状況が続きました。
「もう日本の物価は上がらないのではないか」と思われた、その流れが変わったのが、2022年6月前後からです。世界的には徐々にコロナ・パンデミックの行動抑制が解けて、経済が正常化に向かい始めた時期に当たります。急速に需要が高まったことから供給が追い付かず、物価が上昇へと転じ始めました。それに伴い、日本も消費者物価指数が上昇に転じ、2022年10月には日銀の物価目標である2%を超えて2.5%となり、2023年5月には4.3%まで上昇しました。日本の場合、海外の物価上昇に加えて、円安が輸入物価の押し上げにつながった面もあります。
インフレに強い企業、弱い企業
このように物価が上昇に転じた場合、企業は自社製品の値上げを行います。特に海外から原材料を輸入して加工し、日本国内で販売している企業にとって、海外から輸入される原材料価格の上昇は、業績に大きな影響を及ぼします。原材料以外にも、日本は原油などエネルギーの大半を海外からの輸入に頼っていますから、その価格が上昇すれば、運送費などを介してさまざまなモノの値段が上がっていきます。
とはいえ、原材料や資源・エネルギーの価格が上昇したとしても、それが即、製品価格に跳ね返ってくるわけではありません。製品を提供する企業が得るべき利益をある程度、圧縮して、製品価格の上昇を抑えてくれるからです。
とはいえ、それにも限度があります。この2~3年ほど、消費者からすれば食品などの価格が値上がりし続けていますし、外食する際の値段もだいぶ上がってきました。
これはBtoB企業も同じで、取引先に販売する製品の価格を引き上げるケースが増えています。
そして、ここで製品価格を引き上げられるかどうかによって、株価が上昇する企業と、そうでない企業とが選別されてきます。もちろん、製品価格を引き上げられる企業であれば、インフレ下で売上、利益が共に増えるため、株価も値上がりしやすくなります。