はじめに
昨年始まった新NISAの影響もあり投資信託を購入する方が増えています。投資信託を選ぶ際に投資家は運用リターンに意識を向けがちですが、運用コストも同様に考慮すべきです。
では投資信託を選ぶ際、なぜコストに注意する必要があるのでしょうか。
それは、コストが投資のリターン(利益)を直接削るからです。投資信託の運用成績が良くても、コストが高ければ、その分投資家の利益は減ってしまいます。
例えば、年3%のリターンを期待している投資信託があったとします。
もしコスト(信託報酬など)が 1.5% かかっていたら、手元に残るリターンは 1.5% しかありません。逆に、コストが 0.5% で済む投資信託なら、2.5% のリターンを得られます。
つまり、同じ運用成績でもコストの違いで利益に大きな差が出るのです(わかりやすくするために税金は考慮しません)。
このようにコストは投資リターンに直接影響を与えます。
特に長期投資で大きな影響があります。
例えば、100万円を年3%の利回りで20年間投資した場合を考えてみましょう。
コスト1.5%の投資信託の場合 → 20年後に 約135万円
コスト0.5%の投資信託の場合 → 20年後に 約163万円
同じ運用成績でも、コストが低い方が約28万円も多く資産が増えるのです。
また投資信託の目論見書には「信託報酬」が書かれていますが、実はこれだけではありません。投資信託の運用過程で発生する「隠れコスト」と呼ばれる費用があります。これらは、事前に具体的な金額を示すことが難しく、目論見書には詳細が記載されていないため、投資家にとって見えにくいコストとなっています。信託報酬が安くても、隠れコストが高ければ、結局コストが高くつくことも。投資する前に、運用報告書で実質コスト(隠れコスト込みの費用)を確認するのが大切です。
目論見書で事前に確認できるコスト
目論見書に記載されている投資信託の主なコストは以下の3つです。
1.販売手数料(購入時手数料):投資信託を購入する際に支払う手数料で、販売会社の収益となります。NISA口座では無料の場合も多く、ネット証券などは無料の場合もあるので比較して調べてみてください。対面の証券会社では一般的に購入金額の数%が設定されていますが、対面は担当者がついたり相談可能だったりとサービスも異なるのでそれも含めて比較検討するのがよいでしょう。「ノーロードファンド」と呼ばれる手数料無料の投資信託も存在します。
2.信託報酬(運用管理費用):投資信託を保有している間、日々差し引かれる費用で、運用会社、販売会社、受託会社の報酬となります。年率で表示され、投資信託の種類や運用方針によって異なります。
3.信託財産留保額:投資信託を解約(売却)する際に、基準価額に対して一定の割合が差し引かれる費用となっており、解約によるコストを他の投資家が負担しないようにするためのものです。投資信託の資産に留保されます。