はじめに

「世の中が全部インデックス運用になったら、市場の価格発見機能が失われる」という意見があります。だからアクティブ運用が大事なのだということですが、はたしてどのように考えれば良いのでしょうか。


市場の価格発見機能とは

「世の中が全部インデックス運用になったら、市場の価格発見機能が失われる」とは、具体的にどういうことでしょうか。

アクティブ運用は、企業の本質的な価値に対して、株価が割安になっているものを買い、割高になったら売ることを繰り返しています。もちろん長期的に成長していく企業であれば、ある程度、株価水準が上がったとしても、それが説明できる程度に合理的な水準を維持していれば長期保有は可能になりますが、説明できない水準にまで買い上げられた場合は、ポートフォリオから外すことになります。

このようにして株式市場に参加している投資家は、常に企業の本質的価値に対して、現在の株価が割高か割安かをウォッチしていて、割安と判断すれば買い、割高と判断すれば売ります。こうして株価は値上がり、値下がりを繰り返しています。これが市場の価格発見機能です。

オルタナティブ投資と価格発見機能

では、世の中が全部インデックス運用になったら、どうなるでしょうか。インデックス運用は基本的に市場全体を買うのと同じ投資成果を目指しますから、良い企業も悪い企業も一緒くたに買われます。そのため市場の価格発見機能は劣化し、「極端なことをいえば、株価そのものが動かなくなる」という声もあります。

何となく納得させられてしまうのですが、本当でしょうか。いくつかの疑問が浮かんできます。

そもそも投資家は、インデックス並みのパフォーマンスしか得られない状況で満足できるのでしょうか。確かに今の日本の個人は、それで良し、としているフシはあります。だからS&P500やオール・カントリーといったインデックスファンドに大量の資金が流入しているのですが、世の中には欲張りで、インデックス並みのパフォーマンスでは納得しない投資家も大勢います。そういう投資家が存在している限り、世の中がインデックス運用だけになることはありえません。

もちろん、伝統的なアクティブ運用は多少、縮小していくかも知れませんが、その代わり、さまざまなヘッジファンド戦略を用いたファンドが増えてきています。

ヘッジファンド戦略にはアービトラージやイベントドリブン、ロング・ショート、マーケット・ニュートラルなどさまざまな戦略があるものの、いずれも結局のところは本質的価値に対し、現在の市場で形成されている価格が割高か割安かを判断して、株式や債券の買いポジション、売りポジションを持つことになります。

つまり個人向けの投資信託において、伝統的なアクティブ運用の占める割合が減ったとしても、ヘッジファンドに代表されるオルタナティブ投資が、市場の価格発見機能を維持し続けることは十分に考えられます。

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