はじめに

フリーアナウンサーの小林麻央さんが6月、ご主人の歌舞伎俳優、市川海老蔵さんの記者会見により、「進行性の乳がん」にかかっていることが報じられました。進行の度合いは明らかにされなかったものの、報道陣の質問に対し「比較的深刻。かなり(進行の)スピードが速い」、「(現状は)手術する方向に向かって、抗がん剤治療を行っている」と返答しています。小林麻央さんの一日も早いご回復をお祈りいたします。

さて、FP(ファイナンシャルプランナー)としてこの報道を聞いたとき、「若年層にがん対策は必要なのか」ということを考えます。特に女性特有のがんである乳がんは若年者の女性芸能人が罹患されたというニュースが報じられるたび、「どのように対策するべきなのか」という相談を数多く受けます。

がん罹患に対してできることは、まず「がんにならないように毎日を送ること」です。生活習慣やホルモン異常の原因となる生活環境の整備により、がんに罹患する「可能性」を下げることはできるといわれています。ただ、「乳がん」は遺伝子が原因といわれており、その対策はほかのがんとは異なります。
(参考:もっと知ろう!乳がん

そこで若年の女性が万一がんに罹患したときのために、「お金の面」での対策が必要です。代表的なものが生命保険です。生命保険のうち、病気やケガを保障する医療保険には、特にがんに特化した「がん保険」という医療保険が発売されています。そしてがん保険のなかでも、生命保険各社からは乳がんなど女性のがんに特化した商品も広く発売されています。


がん保険とは

ここからは、がん保険の持つ特徴を考えていきましょう。がん保険は、「医療保険の保障内容+がんへの対策」から構成される保険と考えるとよいでしょう。
一般的な医療保険の保障内容
「入院給付金…入院1日ごとに保険金を支給(免責期間のあるものも)」 「手術給付金…手術に対し所定の保険金を支給(手術内容によって保険金は異なる) 「通院給付金…通院日数に対し所定の保険金を支給」
がん保険による「追加部分の」保障内容
「がん診断一時金…がんと診断されたときに、上乗せで受け取る保険金」 「通院保険金…がんと診断されると、通常の通院給付金に上乗せして支給される給付金」

では、このがん保険、30代や40代の女性の加入は必要なのでしょうか。このときに考察のためのデータとなるのが、この世代の女性がどれくらいがんに罹患しているのか、という統計です。

20代女性や30代女性とがんの関係

国立がんセンターが、がん種別ごとに年齢別の罹患数を発表しています。 (出典:厚生労働省 若年乳がん患者のサバイバープログラム

この表を見ると、乳がんは35歳を超えるあたりから急激に罹患率が高まる傾向が読み取れます。次の図は同ページからの、乳がん罹患率における、「35歳未満の罹患率と35歳以上の罹患率を相対的に表した表」です。

(出典:厚生労働省 若年乳がん患者のサバイバープログラム

上のデータからも、35歳未満の乳がん罹患率は、全体の約2.7%と「極めて低い」ことがわかります。がんのなかでも「若い年齢でかかりやすい」といわれる乳がんの傾向なので、若年のうちから「無理をして」がん保険を準備しなければいけない、ということはないでしょう。

「がん保険が必要か」と相談を受けると、FPをはじめ専門家は「必要です」と回答します。ただ、特に収入の低い20代や30代の若年期女性にとって、保険料は「相対的」に考える支出でもあります。

家計において、保険料は毎月費用のかかる固定支出です。それ自体はがんによる、「万が一医療費が必要になったとき」にとても効果のあるものの、上記表のように年齢によるがんの罹患率が低いのであれば、「20代、30代は無理をしてがん保険に加入することはない」とアドバイスできます。

特に20代や30代の家計は収入も低く、支出で「無駄」ということは決してできないですが、費用回収の可能性が低い項目はできるだけ避けたいもの。家計の余裕感に合わせて、がん保険は削減対象としていくことを相談者の方にはアドバイスしています。

それでは一般的に、がんの治療にはどれくらいのお金がかかるのでしょうか。

乳がんで30日入院した場合の治療費の例

初診料2,730円 指導管理料60,990円 投薬料19,280円 注射料77,670円 処置料16,480円 手術・麻酔料367,090円 検査料82,630円 画像診断料66,380円 入院料559,660円 放射線治療料266,600円 合計1,519,510円

(参考:生命保険文化センター

約150万円。家計にとって深刻なダメージになりますね。もちろん健康保険で3割負担にはなりますが(対象外となる費用もあり)、重い負担であることは変わりません。

がん保険以外でがん保険にそなえる

では万が一のがん罹患にそなえ、がん保険以外で何か準備はできるのでしょうか。実はここで、「医療保険」と「国の制度」にて対応することが可能です。詳しく見ていきましょう。

1:通常の医療保険でがんに対応する

前項にてお伝えした、医療保険の保障内容をもう一度見てみましょう。
一般的な医療保険の保障内容
「入院給付金…入院1日ごとに保険金を支給(免責期間のあるものも)」 「手術給付金…手術に対し所定の保険金を支給(手術内容によって保険金は異なる) 「通院給付金…通院日数に対し所定の保険金を支給」

これら医療保険の保障は「がんの場合、保険金が1円でも支給されない」ものでは決してありません。がん保険は「がんの場合に保険金額を『増額』する」ものであるため、医療保険による一定範囲のカバーは可能です。医療保険の活用に加え、「高額療養費」を使うことで更に家計の負担を軽減することができます。

2:高額療養費について知ろう

高額療養費は、医療機関を利用後、申請することで医療費の自己負担上限額異常のお金が戻ってくる、家計にやさしい健康保険の制度です。

通常、「3割負担」といわれる健康保険制度。病気やケガで医療機関にかかった時は、この健康保険が医療費総額のうち、7割をカバーします。つまり、自分でお金を用意して支払う額(自己負担額)は残り3割です。そのため「3割負担」なのですね。

健康保険に加入している方は、ひと月の医療費総額がこの額を超えた場合に、後日超えた金額が払い戻される制度があります。これにより、一般的なケースでは月にかかる医療費の上限は約10万円前後に抑えられます

(高額療養費による1カ月の自己負担限度額)※一般的な場合。高額所得者は別式あり
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%

たとえば総医療費(健康保険で3割にする前の医療費)が1,000,000円の場合
80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円が自己負担の上限額となります。

急な入院に対して、高額療養費は強い味方。なかなか健康な時にこの複雑な計算式を覚えるのは難しいかもしれません。ただ、「こんな制度があるんだ」とは頭の片隅に入れておくようにしましょう。もしものときに、とても役立つ知識です。

また、高額療養費には該当しないものもあり、注意が必要です。主なものとしては、

  • 差額ベッド代
  • 入院中の食事代
  • 見舞いにくる家族の交通費
  • 入院中の生活費
これらのものは、上記計算式の「総医療費」に含まれませんのでご注意ください。

(参考:全国健康保険協会「協会けんぽ」