はじめに
株式投資における銘柄選びは、多くの投資家にとって共通の悩みです。「安く買って高く売る」という基本は理解していても、実際にどの銘柄を選ぶべきか迷う方は多いでしょう。本記事では、金融アナリストとして長年受けてきた質問に基づき、成長性と割安性を兼ね備えた「安くて伸びる会社」の見つけ方をご紹介します。グロース株とバリュー株の基本から、具体的なスクリーニング方法、そして定性的な分析まで、銘柄選定のヒントをお伝えします。
成長性と割安性 ――「安くて伸びる会社」を狙う
株式投資でどうやって銘柄を見つけているのか。これは金融アナリストとして過去10年、個人投資家から最も多く寄せられた質問のひとつです。
株価が上がる銘柄には、共通して成長性と割安性という2つの要素が潜んでいます。株は安い時に買って高い時に売れといいますが、正確には割安な時に成長する銘柄を買うことが重要だと考えています。本記事では企業の成長力(グロース)と株価の割安さ(バリュー)の両面に注目し、「安くて伸びる会社」を選ぶ銘柄選定方法についてお伝えします。
株式投資の基本 ――グロース株とバリュー株の特徴
まず株式投資の基本となるグロース株とバリュー株を押さえましょう。
グロース株は、業績や利益の成長率の高さ、将来的な事業や業容の拡大、それに伴う株価上昇が期待される企業の株式を指します。例えば、売上高や純利益が毎年大きく伸びている企業、新しい市場を開拓して急成長している企業などがグロース株の典型例です。グロース株は値動きが激しい傾向にあり、株価の値上がり益が大きく見込める反面、業績予想が外れたときなど株価が急落する可能性もあります。将来の成長を織り込んで株価水準が高め(PER などのバリュエーション指標が高く、期待先行で割高になりやすい )になりやすく、成長投資に資金を振り分けがちなので配当金や株主優待は控えめであることが多い点も特徴です。
一方でバリュー株とは、企業の業績や資産価値などに対して株価が割安と判断される銘柄を指します。財務指標で見るとPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった指標が市場平均より低めで、投資家から十分に注目されていないため、本来の価値より安く放置されているケースが多いといえます。バリュー株は配当利回りが高かったり株価の下落リスクが小さかったりと、比較的安定志向の投資家に好まれます。しかし、大きな成長期待がないぶん、急激な株価上昇は起こりにくいとも考えられます。また、売買がほとんどなく流動性が低い銘柄は、株価が割安なまま放置される「バリュートラップ」に陥り、長期停滞するリスクがあります。
それぞれメリット・デメリットがあるグロース株とバリュー株ですが、実は両者の長所を融合した銘柄こそが「勝てる銘柄」の鍵となると考えます。つまり、「高い成長性の見込まれる割安株」や「企業の成長力に対して株価が見合っていない銘柄」を探します。