はじめに

定量分析で銘柄を絞り込む「注目すべき指標」

割安で成長が見込まれる銘柄を探すには、数値で評価できる「定量面」と、数値化しにくい「定性面」の両方からアプローチする必要があります。

1. 売上高成長率とPER

まず定量面では、いくつか注目すべき指標があります。証券会社のスクリーニング機能や株式情報サイトを利用すれば、条件を指定して候補銘柄を絞り込むことが可能です。代表的な指標としてまず押さえたいのが売上高成長率です。過去数年間や予想ベースでの売上高の年成長率を押さえましょう。

売上(トップライン)が伸びていることは、人間でいうと身体が大きくなるということなので、成長の指標として大切なことです。スクリーニングでは「直近○年間の平均成長率○%以上」などと設定できます。例えば、「過去3年の平均売上高成長率が10%以上」のように条件を設ければ、市場平均を上回る成長企業に絞れます。成長率は高ければ高いほど魅力的ですが、持続可能かどうかも後述の裏付け確認で見る必要があります。

PER(株価収益率)も重要です。株価の割安・割高感を測る指標であるPERは株価÷1株利益(EPS)で算出できます。スクリーニングでは「PER○倍以下」で割安株を抽出できます。例えば、「PER20倍以下」などとすれば、市場平均より割安なゾーンにある銘柄を拾えます。ただし単に低PERだけでなく成長率との兼ね合いを見るのが肝心です。

「売上高成長率 > PER」にも注目してみると良いでしょう。これは、「企業の売上高の成長率(%)が、その企業のPER(倍)を上回っているか」を見る方法です。例えば、ある企業Aの昨年度売上高が前年比+20%成長し、現在のPERが15倍であれば、この条件を満たしています(20%>15倍)。一方、企業Bが前年比+5%の成長しかないのにPERが20倍もあるなら、成長性に比べて株価が割高と言えます。

2. PEGレシオ

また、伝説的投資家ピーター・リンチがテンバガー候補発掘に使った「PEGレシオ」も押さえておきましょう。

「成長性の割に割安かどうか」を測る指標となるPEGレシオですが、「PER÷利益成長率」で算出できます。値が1倍以下であれば成長率に比べて割安とされます。利益成長率を売上成長率に置き換えて、来期予想PERを来期予想の売上高成長率で割った値(PEGレシオの簡易版)が1以下の銘柄をスクリーニングしてみる、というのも有用だと思います。「売上高成長率 > PER」の基準を組み込めるツールもありますので活用してみてください。

図

3. 財務の健全性と収益性

財務の面では自己資本比率も押さえましょう。自己資本比率は総資産に占める自己資本(株主資本)の割合で、企業の財務健全性を示します。一般に自己資本比率が高いほど倒産リスクが低く、安全性が高いとされます。目安としては30%以上がひとつの基準で、逆に30%未満だと借金依存度が高く財務不安要因になり得ます。業種によって平均値は異なりますが、スクリーニングでは「自己資本比率○%以上(例:40%以上)」などと設定することで財務基盤のしっかりした会社に絞ることができます。

そしてROE(自己資本利益率)も重要です。自己資本に対してどれだけ利益を上げているか(経営効率の良さ)を示す指標です。計算式は「当期純利益÷自己資本×100」で、株主が出資したお金を企業がどれだけ有効活用して利益を生んでいるかを表します。一般的なROEの水準は8~10%が一応の合格ラインで、10%を超えると優良企業と評価されることが多いです。スクリーニングでも「ROE10%以上」などと設定すれば高収益な企業を選別できます。ただしROEは高すぎても注意が必要です。極端に高いROEは負債でレバレッジをかけている場合もあり、自己資本比率とのバランスを見ることが大切です(理想は高ROEかつ高い自己資本比率です)。
加えて必要に応じてROA(総資産利益率)や営業利益率、PBR(株価純資産倍率)、PSR(株価売上高倍率)などを組み合わせることも有効です。例えば、先に挙げた条件に「営業利益率が継続的に○%以上」や「PBR○倍以下」などを追加すれば、収益性や資産価値から見ても割安な企業を絞り込めます。個人投資家の中には、成長率・PER・ROE・PSRといった複数指標を独自にスコア化し、テンバガー(株価10倍)候補を機械的に抽出する手法を取る方もいます。

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