はじめに
4月22日、東京外国為替市場で一時139円台をつける場面がありました。140円を超えて円高・ドル安が進むのは2024年9月以来およそ7カ月ぶりのことです。要因は、トランプ米大統領がFRBに即時の利下げを要求したことやパウエル議長の解任について検討中であるとの報道から、FRBの独立性への懸念が広がったことです。その後、トランプ大統領がパウエル議長の処遇について「解任するつもりはない」と軌道修正したことを受け、若干円安となりました。
しかし、トランプ政権は、貿易不均衡の是正や国内製造業の輸出競争力を強化するため、日本の通貨政策を批判しています。また、貿易の妨げになる「非関税障壁」について8つの項目をSNS投稿し、そのうちの1つに「為替操作」を挙げました。今後、アメリカから日本に対し円安の是正を求められるとの予測もあります。
こうした状況を踏まえ、円高メリットのある企業が見直される可能性があります。輸入企業にとって円高は多くのメリットがあります。例えば、米国から1万ドルの製品を輸入するとします。1ドル=150円の時は150万円支払う必要がありますが、1ドル=125円の時は125万円の支払いで済みます。1ドル125円の円高になった時の方が日本円ベースでの支払い額が少なくなります。円高環境での輸入は企業業績にとってメリットが大きくなります。では、円高で企業業績にメリットがあるのはどのような企業でしょうか。
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円高で企業業績にメリットがある企業
ニトリ
ニトリ(9843)は、家具・インテリア販売チェーンの最大手です。海外工場は中国、ベトナム、タイ、インドネシア、インドなどアジア圏にあります。2025年3月にはベトナム北部で家具の新工場を稼働しています。新工場では、ソファやマットレスなどを生産し、日本を含むアジア全域の店舗に供給します。商品の9割を海外で生産し輸入しているため、円高が進むと経常利益を押し上げます。なお、2025年3月期の想定為替レートは1ドル=150円と設定しています。1円円高方向に振れると営業利益は20億円上振れとなります。
セリア
セリア(2782)は、100円ショップ大手で、中部地方を軸に全国展開しています。海外からの仕入れが安くなることで同社にも円高になると仕入れコストが安くなり有利となります。他社が値上げをする中で、原材料費の高騰にもかかわらず、価格を維持しています。100円均一を維持することで、顧客のニーズに応え、競合他社との差別化を図っています。
しまむら
しまむら(8227)は、低価格のファッション衣料品店舗を全国展開しています。同社が取り扱っている製品のうち、およそ2割がPB(プライベートブランド)です。自社工場を保有していないことから、サプライヤー等を通じて海外の工場にほぼすべての製品の製造を委託しています。そのため、円高の進行は輸入製品のコスト低減に繋がります。
同社はマネックス系の投資ファンドであるマネックス・アクティビスト・マザーファンドから、配当性向を60%に引き上げるとともに、160億円を上限とする自社株買いの実施を求められています。
神戸物産
神戸物産(3038)は、業務用食品スーパーのフランチャイズチェーンが中心に外食・中食事業やエコ再生エネルギー事業を手がけます。自ら生産したPB商品などを卸します。売り上げの3割を占めるPBは海外で調達したり、原料を輸入して国内工場で生産したりします。円安が進むと粗利益も圧迫されやすくなります。
サイゼリヤ
サイゼリヤ(7581)は、イタリアンレストラン「サイゼリヤ」を直営展開しています。食材の輸入コストが減り、売上原価率の改善につながる可能性があります。国内では低価格を維持して客数が増加しており、円高は恩恵となりそうです。コメ価格に苦戦していましたが、政府の備蓄米放出で状況が好転する可能性もあります。4月10日の決算で、米価格の高騰や野菜価格の上昇の影響で粗利益率が予想を下回り、下方修正を公表していました。
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