はじめに

米国・トランプ政権による追加関税措置、米中対立の激化など、世界経済には不透明感が広がっています。一強といわれていたアメリカハイテク株は軒並み下落しており、株式市場全体が重たい雰囲気です。そんな中、良品計画(無印良品)は堅調な業績を背景に、株価が上場来高値を更新しました。

なぜこの逆風の中、無印良品はこれほど強いのでしょうか?


通期予想の上方修正を発表

直近4月11日に発表された2025年8月期の第2四半期決算を確認します。

営業収益は3,820億円(前年比+19.4%)で過去最高を更新。営業利益は、361億円(前年比+49.8%)、経常利益345億円(前年比+43.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益254億円(前年比+61.6%増)とすべて大幅な増益 。同時に通期予想の上方修正を発表したこともあり、決算後は、株価が一段と上昇し、上場来高値を更新しました。

画像:TradingViewより

この週は、トランプ関税発動を受け、世界の株式が暴落する中、良品計画はどこ吹く風といった感じで、軽々と高値を更新したのです。

カテゴリー別の売上は、生活雑貨、衣服・雑貨、食品、その他のすべてのカテゴリーが成長していますが、とくに構成比50.5%といちばん高い生活雑貨が前年同期比120.6%と非常に好調です。

そういえば、最近、無印良品に行ったところ、スキンケア商品売り場がかなり充実しており、人気の高さを感じました。主力商品の「敏感肌用シリーズ」は、2023年9月に約23年ぶりに全面リニューアルしており、配合成分やパッケージを刷新。香料・着色料・鉱物油フリーで肌にやさしい処方、高品質な天然水(岩手県釜石の水)を使用しながらも、価格は、790円(300ミリリットル)とドラッグストア商品並み です。また、ボトルデザインは無印らしいミニマル志向で、男女問わず受け入れられやすくなっています。最近は、男性のスキンケア熱が高まっていますので、その点でも追い風なのでしょう。

このスキンケア商品は、日本でリニューアル発売後、2025年1月から中国市場でも展開を開始し、好調なスタートを切っています。ちなみに当社の海外売上比率は40%程度で、アジア圏、とくに中国・東南アジア市場での店舗数増加が大きなドライバーになっています。また、EC(ネット通販)も力を入れており、オンライン売上高は前年同期比で30%近く伸びました。

世界経済が萎縮する中、無印良品の業績、株価が絶好調の理由

①:現地適応力とブランド戦略
無印良品の海外戦略の強みは、単なる「日本ブランド」の押し売りではなく、現地のニーズに合わせた柔軟な対応にあります。

例えば、中国市場では、現地の味覚に合わせた食品やコンパクトな住宅事情に配慮した収納家具を展開。インドや東南アジアでは、価格帯を調整しつつ、エッセンスとなる「シンプルで高品質」というブランドイメージを守っています。

また、製造拠点を現地に移し、「現地生産・現地販売」を進めたことで、トランプ関税などの貿易摩擦リスクを最小限に抑えています。この地に足のついた戦略が、経済の波に左右されにくい強さを生み出しているのです。

②:サステナブルな価値提案
無印良品は近年、サステナビリティ(持続可能性)を意識した商品開発にも力を入れています。再生素材を使った衣類や、無駄を省いたシンプルなパッケージデザインなどがその一例です。これにより、世界的に高まる「エコ志向」「ミニマリズム志向」とも親和性が高まり、特に若年層からの支持が拡大しています。

無印の「ちょうどいい価格と品質」というポジションは、単なる安売りではない、「価値に見合った価格」という納得感を消費者に提供している点が特徴です。

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