はじめに
岸田政権時の2022年11月に「資産所得倍増プラン」を公表し、「貯蓄から投資へ」をスローガンに掲げました。「資産所得倍増プラン」は、日本の個人金融資産2000兆円のうち、半分以上が預貯金や現金で保有されている状況を打破するために、個人の貯蓄を投資にシフトすることを奨励する政策です。このプランでは、NISAの拡充やiDeCoの改革を行い、一部の投資に対して税制優遇を実施しています。具体的には2022年から5年間で買い付け額を28兆円から56兆円へと倍増させるとしていました。
しかし、2025年2月時点で目標としていた56兆円を超え、当初目標から3年弱も早く達成しています。日本証券業協会が公表したデータによると、NISA制度が始まった2014年からの累計買付額が2024年末に全金融機関で52.7兆円、2025年は3月末までに5兆1405億円の買い付けがありました。
NISA口座開設数の増加は鈍化
NISAの口座開設数に関して、政府は「2022年の1700万口座から2027年末までに3400万口座へと倍増させる」と目標に掲げています。NISAの利用状況調査によると、2024年末時点の口座数は2560万4058口座となり、2023年末時点から20.5%増加しています。
しかし、口座開設数は残念ながら新NISAとして拡充された2024年1月がピークで、2024年中からすでに鈍化しています。2025年に入っても、証券10社の口座開設は前年同月の半分以下にとどまっています。制度普及がこのまま止まってしまうのか、口座の利用状況と合わせて今後の動向が注目されます。
高配当銘柄が人気
NISA口座からの買い付け額は2024年1月に新NISAが始まったのを機に急増しました。2023年末までの10年間に積み上がった金額は35.3兆円でしたが、2024年だけで17.5兆円も増えています。その内訳は成長投資枠で約12.5兆円、つみたて投資枠で約5兆円となっています。
成長投資枠の買付額の比率は、株式が57%、投資信託が43%です。投資信託買付額上位10銘柄の投資先は、海外や内外でインデックス型が中心とのことで、資金流入が急増している「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」だと推測されます。株式買付額上位10銘柄は国内株が中心となっており、配当利回り6%が1銘柄、3%が5銘柄、2%が1銘柄、2%未満が3銘柄と高配当銘柄の買い付けが上位を占めています。業種別では、銀行3銘柄、卸売が2銘柄、非鉄金属、情報・通信業、海運業、輸送用機器、電気機器が各1銘柄となっています。銘柄は明らかにされていませんが、JTやメガバンク、三菱商事、三井物産などではないかと推測されます。
買い付けが目立ったのは日本株か
先日、日経新聞では、3月末から4月初めの2週間で、ネット証券大手5社のNISA口座で6800億円の買い付けがあったと報じています。同期間日経平均は下落率が約10%に達しました。下げ相場の中、買い付けが目立ったのは国内の個別株とのことで、個人投資家の押し目買いスタンスが見て取れます。NISA口座で損失が発生した場合、他の口座の利益と相殺する損益通算や、損失を翌年以降に繰り越して税金を減らす繰越控除はできないなど課題もあります。しかし、「貯蓄から投資へ」の流れは少しずつ浸透していると感じます。
トランプ政権が誕生し、今後も同大統領の発言によって相場は大きく上下することが考えられます。下落した時が絶好のチャンスと捉えて投資をすることが大事だと思います。
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