はじめに
相続放棄が難しい場合の代替策
「土地は不要だけど、預貯金などのプラスの財産は相続したい」
「すでに相続の手続きを進めてしまい、今さら放棄できない」
このようなケースでは、相続放棄の代わりに他の方法で“不要な土地だけを手放す”選択肢を検討する必要があります。ここでは、代表的な代替策を3つご紹介します。
①相続土地国庫帰属制度を利用する
2023年4月にスタートしたばかりの新制度である「相続土地国庫帰属制度」は、相続または遺贈によって取得した不要な土地を、一定の条件のもとで国に引き取ってもらえる制度です。
【ポイント】
- 利用できるのは、相続または遺贈で取得した土地のみ。
- 空き家(建物がある土地)や、境界トラブルの可能性がある土地などは対象外。
そのほか、対象外の条件も多く、事前に測量や解体等を求められる場合もある。 - 国に対して、審査時の手数料と、処分時の負担金支払いが必要。
(審査手数料(1筆あたり14,000円)と、審査通過後の負担金(原則1箇所あたり20万円~))
②売却・譲渡を検討する
「使わないから」と思っていた土地でも、思わぬ買い手が見つかることがあります。地元の不動産会社や空き家・空き地専門の買取サービス、自治体の空き家バンクなどを活用して、売却・無償譲渡を検討してみましょう。
【ポイント】
- 売却できれば現金化が可能な場合もある
- 管理責任から解放される
- 売却できるまでに時間がかかる可能性がある
- 土地の状態や法的リスクによっては、譲渡すら困難な場合もある
③遺産分割協議で他の相続人に引き取ってもらう
相続人が複数いる場合、遺産分割協議によって土地の取得者を調整することができます。たとえば、親の家を継ぐ予定の兄がいらない土地も一緒に相続し、代わりに自分は預金を受け取る、というような分割方法も可能です。
【ポイント】
- 相続人間で柔軟に調整できる
- 相続放棄の手続きをせずに済む
- 協議の成立には全相続人の合意が必要
- 感情的な対立や調整が難航に陥ることも
相続放棄を検討する際には、「放棄するかどうか」だけでなく、「他により良い方法はないか?」という視点も持つことが大切です。次の章では、こうした判断を間違えないために活用できる専門家や相談窓口についてご紹介します。
専門家への相談を検討しよう
相続放棄や不要な土地の処分は、一見シンプルに思えても、実際には多くの法律・手続き・人間関係が絡む複雑な問題です。
たとえば、
- 「土地はいらないけど、預金はもらいたい」
- 「期限を過ぎてしまったけれど放棄したい」
- 「相続した土地がどんな状態なのか分からない」
- 「兄弟と話がまとまらない」
など、少し条件が異なるだけで対応すべき内容が大きく変わってきます。
こうした場面では、早めに専門家に相談することが、トラブル回避の最も有効な手段となります。
<相談先として検討すべき専門家>
◆ 弁護士
相続放棄の申述手続きや、他の相続人との交渉、遺産分割協議など、法的な判断が求められるケースでは弁護士が適任です。特に、相続放棄に関するアドバイスや申立書類の作成、トラブルへの対応を一貫してサポートしてもらえます。
◆ 司法書士
相続登記や土地の名義変更、家庭裁判所への書類提出のサポートを得意とします。手続き面での支援を受けたい場合に有効です。
◆ 税理士
土地や相続財産の評価、相続税の申告など、税金が絡むケースでは税理士のサポートが不可欠です。相続放棄によって相続税がどう変化するか、といったアドバイスも得られます。
◆ 不動産会社・土地引取サービス会社
不要な不動産の売却や無償譲渡の相談には、不動産会社や専門の引取サービスも選択肢になります。売却の可能性を探ったり、土地の活用法を知れたりするきっかけになります。
◆公的な無料相談も活用できる
各市区町村の役所や法テラス、弁護士会・司法書士会などが実施する無料相談会を活用すれば、初期段階で方向性をつかむ手助けになります。
迷ったら、まずは相談から始めよう
「何をどうしたらいいか分からない」という状況で悩み続けるよりも、一歩踏み出して相談することで、思いがけずスムーズに解決策が見つかることもあります。
とくに相続放棄は、手続きに期限があるため早めの行動が大切です。複雑な判断を自分だけで抱え込まず、専門家の知見を借りながら、納得のいく形で相続に向き合っていきましょう。
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