はじめに
企業型確定拠出年金(企業型DC)をよくわからないまま続けていませんか? 加入から何年も経っているのに、自分がどんな制度に入っているのか、運用状況はどうなっているのかを把握していない方は多くいらっしゃいます。企業型DCは「自分の老後資金」を左右する大事な仕組みです。
本記事では、企業型DC制度の基本から、将来に向けた見直しのヒントまでをわかりやすく解説します。
活用法が将来に大きな差を生む企業型DC
「確定拠出年金制度」は、公的年金(国民年金・厚生年金)に上乗せする「私的年金」のひとつです。資産を自分で運用し、将来の受取額が自分の運用結果によって変わる点が公的年金との違いです。
確定拠出年金制度には、企業が導入する「企業型確定拠出年金(企業型DC)」と、個人が加入する「個人型確定拠出年金(iDeCo)」があります。
企業型DCは、企業が従業員のために掛金を拠出し、運用は従業員自身が行います。運用商品の選択、配分割合の変更が自由にできます。年金受給額は確定しておらず、受取額は運用結果に応じて増減します。運用益には税金がかからないため、効率的に資産形成ができるのがメリットのひとつです。
受取方法は「一時金」と「年金」から選択でき、加入者ごとのライフプランに応じて選べます。
一時金受取の場合は「退職所得控除」、年金受取の場合は「公的年金等控除」とそれぞれ税制優遇を受けることができます。原則60歳から受け取り可能ですが、企業によっては最長70歳まで積み立てられる場合もあり、より長く優遇を受けながら資産形成ができます。
入社時や、会社が確定拠出年金制度を導入した際に説明会が実施されているはずですが、「一度聞いただけではよくわからなかった」というお声をよく伺います。年金・税金・投資と関わる分野が広いため、確かに理解するのにハードルがあります。制度についてよくわからないまま放置してしまっている方も見受けられますが、以下に当てはまる場合は要注意です。
- 自分の積立額や資産残高を知らない
- 商品選びが不安で、とりあえず定期預金にしている
- 初期設定のまま、一度も商品や配分を見直したことがない
退職まで長く続く制度だからこそ、利用の仕方で将来の年金額に大きな差が出る可能性があります。利用状況について見直すべき点がないか、確認していきましょう。
企業型DCの制度タイプとメリット
企業型DCは、会社によって設計が異なります。制度を活用する第一歩として、勤務先の制度タイプを知ることが大切です。
(1)給与に上乗せして支給
会社が対象者全員の給与に上乗せして掛金を拠出します。従業員の自己負担はありません。最も一般的な形です。
(2)マッチング拠出制度
(1)の会社の掛金に加えて、従業員自身も掛金を追加できる仕組みを導入している企業もあります。マッチング拠出は「加入者掛金」として給与から拠出しますが、全額所得控除の対象となるため、節税効果も得られます。たとえば、給与として受け取ったお金をNISAなどで積み立てた場合、課税後の所得から積み立てることになります。所得控除のあるマッチング拠出での積み立ては、より効率よく資産形成ができます。
(3)選択制
給与の一部または全額を、確定拠出年金の掛金として積み立てるか、通常の給与として受け取るかを従業員が選べる制度です。掛金として積み立てをすると手取りは減りますが、積み立てた分は給与所得と見なされず(課税所得から外れる)、税金や社会保険料の軽減につながります。
(1)と(3)を併用している企業もあります。勤務先の制度タイプと、どのようなメリットがあるのか、確認してみましょう。