はじめに
保険を使っての資産形成のひとつに一時払終身保険があります。積立利率が低迷する前は、3年間預ければ、元本を超えた解約返戻金が受け取れる商品も存在しました。長く続く低金利で影を潜めていましたが、近年、有効活用できる商品も登場しています。加入のメリットと気をつけることをお伝えします。
円建て・外貨建て、2つの選択肢
一時払終身保険の仕組みを説明します。
一時払終身保険は、申込時に一括して保険料を払い込み、一生涯の死亡を保障する商品です。一般の生命保険は、健康状態を申し出る告知がありますが、一時払終身保険の多くの商品は、無告知や簡単な告知、例えば「現在入院していないか」のような告知で加入できます。加入できる幅がとても広く、85歳~90歳位まで加入することができ、保障が目的というより、資産の置き所が目的、相続対策が目的の保険といえます。
一時払終身保険には円建て商品と、米ドルや豪ドルなどの外貨で運用する外貨建て商品があります。死亡保険金額は一定額を保障する商品と積立利率により変動する商品があります。外貨建ての場合、利率の変動に加えて、為替レートによっても死亡保険金額が変動する場合があります。保険会社各社商品の内容により積立利率は違いますが、外貨の場合3%~5%程度、円の場合1%~1.5%程度の利率です。
積立利率変動型の商品でなければ、申込時の利率が社会情勢により変わることはありません。ただし、10年間固定、10年後に、保険会社が提示する利率でまた10年固定という設定の商品でしたら、途中で利率が変わることはあります。元本割れするケースが考えられるとしたら、保険を早期解約する場合です。その場合、解約控除という費用がかかり、加入から解約までの年数が少ないと控除額が多く、元本割れする可能性も考えられます。このようなリスクもありますので、保険商品を使う場合、10年間程度は寝かせておける余裕資産であることが重要でしょう。
現在メガバンクでは、円の普通預金金利は0.2%程度、ネットバンクでは少し幅があり、0.2%~0.6%程度です。定期預金の金利は、5年定期で0.4%、10年定期で0.5%とまだまだ金利は低迷しています。外貨(米ドル)はどうかというと、預け入れる期間でまちまちですが、年4%程度と円に比べるとだいぶ有利な金利になっています。銀行のサイトを見ると、スマホから簡単に外貨預金の設定ができる仕組みになっているようですが、外貨口座をもつのは、ハードルが高く、実行に移すには抵抗がある人も多いでしょう。
とはいえ、これだけ金利差があるのですから、簡単に活用する方法があれば使いたいと思うひともいるはずです。資産を増やす意味では、NISAやiDeCoを使った投資信託への投資を超えるリターンが得られる保険はなかなかありませんが、保険商品を使えば、比較的身近に外貨を使って資産を増やすことができます。
例えば、ある程度まとまったお金のある40歳の男性で考えてみます。現在500万の資金は定期預金に預けていて、普通預金に生活資金はあるので、10年程度は寝かせていて使う予定はないというケースです。
保険料500万円を一括で支払い、一時払終身保険に加入します。
円建て、積立利率1.28%の商品の場合、死亡保険金額は1年後5,064,000円5年後5,328,298円10年後5,678,151円のように、複利で増えていく仕組みです。
米ドル建て、積立利率4.55%の商品の場合、死亡保険金額は1年後4,937,942円5年後6,049,546円10年後7,790,605円と資産が増えていきます。
ただし、ドル建ての場合、為替レートの上下によってかなり資産額が変動します。それでも、4.55%の複利の力はとても強く、為替レートが円高に30円進んでも、6年後には500万円の元本を上回っていくシミュレーションですので、10年程度寝かせておいていい資金であれば、資金の置き所にするメリットは充分にある商品です。
500万円を定期預金に10年預けたままの場合は、利息は25万円程度ですから、為替リスクを避けたいひとは、円建ての一時払終身保険に加入しても、充分資産を増やすことができるでしょう。