はじめに
気がつけば、しまむら(8227)の株価がじわじわと上昇し、2025年5月16日には、上場来高値となる10,740円を記録。2009年にテレビの情報番組で紹介されたことをきっかけに「しまらー」という言葉が全国的に広がるほどブレイクしましたが、その後はパッとせず、株式市場でも話題になることはほとんどありませんでした。しかし、裏では着実に業績を積み上げ、株主からの信頼も高まっているようです。今、改めて「しまむら流」の強さを見直す時が来ているのかもしれません。
株価・業績ともに過去最高を更新
2025年2月期決算では、売上高6,653億円(前年同期比+4.8%)、営業利益592億円(同+7.1%)と、いずれも過去最高を更新。既存店売上も堅調で、プライベートブランドの「CLOSSHI PREMIUM」は前年比37.7%の売上増という好調ぶりを見せています。直近発表された5月の月次既存店売り上げも、前年比101.7%と3ヶ月連続で前年を上回っています。
2024年2月には、1株を2株に分割したばかりですが、その後も株価は堅調に推移。2025年5月には分割後の株価でも上場来高値を更新し、1万円を超えたため個人投資家の間でも「また分割するのでは?」と注目が集まっています。企業サイドからも、5月19日に「投資単位の引き下げに関する考え方および方針等について」というリリースを出しており、株式分割に対する前向きな姿勢を表明しています。
財務の健全性が支える安定経営
業績が堅調でも、借入でレバレッジをかけている企業は少なくありません。ところが、しまむらは、有利子負債ゼロの典型的な“無借金経営”を貫く稀有な存在です。自己資本比率は85.5%と高く盤石の財務体質。しかも、土地や建物を可能な限り自社保有とし、資産の裏付けもあります。
これにより、景気が悪化しても資金繰りに追われるリスクが小さく、不況時にも人材や在庫投資を継続できる余裕が生まれます。世界経済の先行きが不透明な今、とくに注目すべきディフェンシブ銘柄の代表といえるでしょう。
しまむらのローコスト経営モデルとは?
しまむらの強さを語る上で外せないのが、徹底した「ローコストオペレーション」です。
第一に、サプライチェーンの効率化。SPA(製造小売業)ほどの垂直統合はしていませんが、自社企画のPB商品を多く扱い、製造は外部委託。仕入価格を抑えつつ、高い粗利率を確保しています。
第二に、「店別発注制度」に象徴される現場主導の柔軟な品ぞろえ。全国一律の商品展開ではなく、店舗ごとに客層や売れ筋に応じて発注をコントロール。これにより売れ残りのリスクを最小化し、在庫の回転率を高めています。店舗の裁量を重視することで、売上の最大化と在庫リスクの最小化を両立しています。
第三に、郊外の小型店舗へのドミナント出店戦略。都心より地代が安く、既存店舗と物流拠点を共有できることで、配送効率も高くなります。店内オペレーションもシンプルで、人員も最小限に抑えています。
第四に、高効率な物流システム。しまむらは全国に複数の物流センターを持ち、週に数回という高頻度で商品を配送しています。配送ルートも効率化されており、1便で複数店舗を回る仕組みを採用。こうした物流最適化が店舗の在庫回転率を高め、在庫コストの削減に寄与しています。
これらの積み重ねが、しまむら独自の「ローコスト・高収益」モデルを形作っており、「低価格・高品質」を実現しています。