はじめに

デコレーションケーキ、チキン、シャンパン・・・・・・。クリスマスのご馳走といえば、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。いつもより豪華に彩られたクリスマスの食卓に、ここ数年、ある変化が見られるようです。

マーケティング調査会社のインテージが、クリスマス期間中の食卓に登場するメニューの実態について分析。調査結果から、今年の流行語大賞にも選出された「インスタ映え」の影響で、あるメニューの登場率が急上昇していることが明らかになりました。


登場回数が急増したパエリア

今年のユーキャン新語・流行語大賞を受賞した「インスタ映え」。夏にはフォトジェニックなシチュエーションとして「ナイトプール」「夏フェス」「グランピング」などが流行り、インスタ映えは若い人たちの消費行動において重要な判断基準になってきました。

そうしたインスタ映えを意識した行動は、クリスマスの食卓にも影響を与えているようです。

マーケティング調査会社のインテージが、2014~2016年のクリスマスイブの日を対象に、食卓に上がったメニューの登場率を比較した調査を実施しました。1,000食中の出現回数を集計したところ、パエリアの登場率が2016年は28.7回と、2年前の4倍に増えていたことがわかりました。

なぜ「クリスマス=パエリア」なのか

パエリアは、お米と一緒に魚介や野菜、鶏肉などを炊き込んだスペイン・バレンシア地方の郷土料理です。食卓に並ぶパエリアの登場率を月次で見てみると、クリスマスに限らず、人が集まる機会の多い12月に急上昇していることがわかりました。パエリアがパーティーメニューとして認識されてきているようです。

ここ数年で登場率が急上昇している理由について、同社マーケティング部の久内佑允シニアアナリストは「カラフルな具材を使うため、色鮮やかで見た目が豪華なパエリアはインスタ映え抜群」としたうえで、インスタ映えを重要視する昨今の風潮を反映した結果だと分析します。

自分で料理するには、一見ハードルが高そうな印象がありますが、実はフライパンひとつで作れる手軽さや、簡単に作れるキットが売り出されていることも、登場率が高まっている理由の1つだといいます。

にぎり寿司の東西格差のワケ

パエリアのほかにも、ここ数年でクリスマスの食卓に上がる登場率が上昇しているのが、にぎり寿司です。パエリアほどの伸びは見られないものの、登場回数では上回っており、2年連続で前年の1.4倍に増加しました。

特に関東では62.4回と多く、2016年のクリスマスイブ当日の食卓登場メニューランキングでは10位にランクインしています。一方、関西では30位にとどまりました。1,000食中の登場回数に至っては4.77回しかありませんでした。

関西では、ハレの日に「ちらし寿司」「巻き寿司」を食べるのが一般的でした。一方、にぎり寿司の発祥とされるのは江戸です。「古くからの食文化の習慣が、現在のクリスマスの食卓にも表れているのではないでしょうか」と、久内さんは推察します。

関西で3位にランクインしたポテトサラダも、東西で登場率が大きく異なります。関西では103.8回なのに対し、関東では63.9回で9位と見劣りします。

関西ではクリスマスに限らず、日頃からポテトサラダが食卓に登場する回数が関東よりも多いそうです。「日常の食卓に並ぶ料理が、クリスマスなどのイベントでも馴染みのある料理として振る舞われるため、その違いがより顕著に表れたのではないでしょうか」(久内さん)。

トレンドの変化や東西の食文化の違いで、意外な変遷を遂げていたクリスマスの食卓。今まで取り入れていなかった他所の家のメニューを取り入れると、例年とは雰囲気の違う楽しいクリスマスを過ごせるかもしれません。

(文:編集部 土屋舞)

この記事の感想を教えてください。