はじめに
中東情勢の急激な悪化により株式市場が警戒ムードを高める一方で、この40日間で株価が約5倍に跳ね上がった企業があります。その名はコンヴァノ(6574)。ネイルサロン「FASTNAIL」などを全国展開する美容サービス企業です。
これまで長く赤字体質で、投資家からもあまり注目されていなかった同社ですが、ある決算発表を境に株価が大きく動き始めました。今回の記事では、その変化の正体と、投資家がどのタイミングで“気づけた”のかを掘り下げていきます。
何が起こったのか? 決算と株価の時系列
2024年10月〜直近にかけてのコンヴァノの株価と決算イベントを確認します。
画像:TradingViewより
① 2024年 11月14日に発表された2025年3月期第2四半期決算の時点では、表立って変化がないように見られます。
② 2月14日に発表された2025年3月期第3四半期決算では、四半期単体で初の黒字転換となっています。
③ 5月15日に発表された2026年3月期の業績予想では、売上・利益ともに急拡大が見込まれました。
④ 6月19日には中期経営計画の上方修正が発表され、2027年3月期の営業利益目標を10億円から30億円へと大幅に引き上げ。同時に、2026年3月期の通期業績予想も上方修正され、営業利益予想は5.1億円から10億円と、ほぼ倍増となりました。
特に注目すべきは④の6月19日。中計の大幅な上方修正が発表され、株価はわずか数日で1万円を超える水準へと急騰しました。
いったいなぜ、業績が急改善・急拡大しているのか?
そもそもネイルサロンの経営は、非常に参入障壁が低く、あまり儲かりやすいビジネスではないと考えられがちです。そんな既成概念があるため、個人的には、どうしても当社に投資する気にはなれませんでした。
しかし、ここまで株価が上昇するからには、なんらかの構造変化があるに違いありません。そこで、決算説明資料に丁寧に目を通すと、同社の構造改革が見えてきました。
まず、コンヴァノは、業界では稀な「ネイリストと受付・提案役を分離する分業制オペレーション」を確立し、ネイリストの作業効率を最大化しています。さらに、ジェルオフ機器の導入により、ジェルオフ時間を5分に短縮(これは本当に革新的です。通常、人力で行うと1時間近くかかります)。これにより施術時間が1人1時間となり、回転率が向上しました。
最も重要なネイリストの確保については、研修センターを増設し、未経験者を即戦力化する独自カリキュラムを整備。これにより採用の裾野が広がり、予約枠の拡大 → 来店数増 → 売上拡大という好循環を実現しています。
そして、同社の強みの一つとなっているのが、「FASTNAIL公式アプリ」です。これにより、
・予約手数料が削減(ホットペッパーなど外部サイト依存から脱却)
・顧客単価・LTV(顧客生涯価値)の向上
・広告費のROI改善(SNS・アプリによる自社集客)
といった効果が得られています。つまり、単なる「予約アプリ」ではなく、利益構造を変える戦略的ツールとなっているのです。
また、顧客サイドから見ても、
・「来月もまた同じネイリストで同じメニューにしたい」
・「アプリから空いている店舗をサクッと予約できて便利」
・「誕生月にクーポンが届いたので久々に来店」
といったように、使い勝手が良く、予約率・継続率・単価すべてを押し上げる仕組みとなっています。
さらに、もう一つの強みは、ネイルサロン業に特化した自社開発のBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールを使用している点です。このツールにより、店舗ごとの売上や顧客単価はもちろん、スタッフ一人ひとりの生産性までを可視化することが可能です。
加えて、FASTNAIL公式アプリと連携することで、顧客の来店履歴や施術傾向を分析し、リピート施策や広告配信の最適化に活用しています。これにより、現場の運営判断が“勘”ではなく“データ”に基づくものとなり、全社的なKPI改善と収益性向上に貢献しています。