はじめに

行政による“強制撤去”の実際の事例

ここからは、実際に行政が空き家を撤去した例を3つご紹介します。

【事例1】三重県伊賀市(2024年)

ある住宅が、長年放置され、倒壊の危険があると判断されました。持ち主にあたる相続人に改善を求めましたが、「お金がない」として放置されたため、市は安全を最優先し、最終的に家を解体しました。解体にかかった費用は約429万円で、その費用は相続人に請求されています。

【事例2】長野県中野市(2023年)

雪の重みで倒壊した空き家がありました。市は十数回にわたる注意喚起をしたものの、持ち主は適切な対応をする見込みがなく、通行人に対する危険が高まっていると行政が判断し、最終的に行政代執行として市が解体しました。

【事例3】愛知県名古屋市(2025年)

通学路のすぐ近くにあった空き家の老朽化が著しく、行政から80代の所有者に対して、3年以上にわたる指導を続けたものの、それに応じない状態でした。このまま荒廃が進むと、子どもたちに危険が及ぶと判断し、緊急措置として解体撤去しました。この解体にかかった費用約200万円は、所有者に全額請求する方針になっています。

これから空き家を持つ可能性がある人

ここまで見てきた通り、空き家をある日突然解体されてしまうほど強引ではないものの、それでも行政の指導などを軽視していると、所有者の意に反して解体され、その解体費用を請求されるため、対岸の火事のように見ていられる問題ではありません。

少子高齢化が進んでいく中、両親や親戚が亡くなったあと、空き家となった実家の所有者となって、「実家を誰が、どのように相続するかどうか」を悩む人はますます増えていくことが予想されます。

ちなみに、使用していない空き家の対処方法は、

・売却する
・賃貸する
・自ら使用する
・解体して更地にする(その後建替えや、更地で売却・賃貸するなど)
・相続放棄する

といった選択肢が考えられます。

なお、2024年4月から、不動産の所有者に相続が発生した際に、その相続人の名義に変更する「相続登記」が義務化され、相続した不動産を一定期間内に登記しなければ、強制解体のリスクだけでなく、過料が科されるリスクも発生するようになりました。

その意味では、空き家そのものの方針だけでなく、手続き上の方針も早期に決める必要があります。

空き家は放置しないことが一番の対策

空き家問題は、「自分には関係ない」と思っていると、後から大きな負担となって返ってくることがあります。

もしご家族やご自身に空き家がありそうだなと思ったら、早めの家族会議を設けるほか、不動産の専門家や市町村役場などに一度相談してみることをお勧めします。“知らなかった”で済まされない時代だからこそ、今できる対策が大切です。

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