はじめに

今、私たちの働き方やキャリアは多様化しています。転職や再就職、スキルアップなど、人生の節目で「もう一度学びたい」「自分の可能性を広げたい」と考える方も増えてきました。

そんな中、注目されているのが「学び直し(リスキリング)」という選択肢です。自分の力を高めて次のステップへ進む手段として、社会全体で関心が高まっています。国では、誰もが必要なときに学びを取り入れられるよう、さまざまな支援制度を整えています。これらを活用すれば、費用の負担を抑えながら、将来に向けた準備を進めることができます。

この記事では、そんな“学び直し”を後押ししてくれる具体的な制度の内容や活用方法について、ご紹介していきます。


再就職・転職を目指す方に無料で学べるハロートレーニング

転職や再就職を考える中で、「収入がない間に何をすればいいのか」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。そんな時におすすめなのが、ハローワークを通じて受講できる「職業訓練」と「求職者支援制度」(総称:ハロートレーニング)です。いずれも国が提供する制度で、再就職やスキルアップに向けた学びを、無料または低負担で受けることができます。

「職業訓練」は、雇用保険(失業手当)を受給しながら受講できる制度です。雇用保険の受給資格がある方が、受給期間中に訓練を受けることで、経済的な支援を受けながらスキルアップを目指すことができます。

医療事務や介護、保育、パソコン、経理、プログラミングなど、実務に直結するスキルが学べる講座が豊富にあり、無料(テキスト代などは別途)で受講できます。最近では、自宅で学べるeラーニング対応や、託児サービス付きの講座も増えており、家庭と両立しながらの受講も可能です。

一方で、「求職者支援制度」は、雇用保険に加入していなかった方や、失業手当の受給が終了した方などを対象とした制度です。こちらもパソコンスキル、介護、ネイル、Webデザイン、簿記など実践的なスキルが身につく講座を無料(テキスト代などは別途)で受講でき、一定の条件を満たせば、月10万円の職業訓練受講給付金が支給される場合もあります。

どちらの制度も共通しているのは、「再就職を目的とした支援制度」であることです。単にスキルを身につけるだけでなく、原則として受講後3ヶ月以内の就職を目指す必要があります。そのため、自分に必要なスキルや希望職種とのつながりを意識しながら講座を選ぶことが大切です。

在職中でも国の補助でお得に学べる教育訓練給付

教育訓練給付制度とは、働く方のキャリア形成やスキルアップを支援するために、厚生労働省が実施している制度です。一定の条件を満たす方が、国が指定する講座を受講すると、受講費用の一部が給付されます。

この制度は、正社員・契約社員・パート・派遣社員など、さまざまな働き方をしている人が対象であり、在職中の方はもちろん、退職後でも条件を満たしていれば利用可能です。

給付制度は主に3つに分かれており、受講内容や目的に応じて給付率や上限額が異なります。

1. 一般教育訓練給付金(給付率:20%)

もっともベーシックな給付制度で、比較的短期間で取得できる資格やスキルの習得を目的とした講座が対象です。たとえば、ファイナンシャル・プランナー、簿記、TOEIC、MOS、医療事務などの資格講座が該当します。

・受講料の20%(上限10万円)が支給されます
・雇用保険の加入期間が原則1年以上あれば申請可能です(初回の場合)

2. 特定一般教育訓練給付金(給付率:40%)

「より専門的な資格を取りたい」「転職や独立を視野に入れている」方に向けた制度です。対象となるのは、一定の難易度や専門性を持つ資格取得講座で、たとえば宅地建物取引士、登録販売者、社会保険労務士、行政書士、介護職員初任者研修などが含まれます。

・受講料の40%(上限20万円)が支給されます
・原則として雇用保険の加入期間が3年以上必要です(初回は1年以上で可)

3. 専門実践教育訓練給付金(給付率:最大80%)

長期的かつ高度なスキル取得を目指す講座に適用される制度で、国家資格や成長産業に関する専門分野の訓練が対象となります。代表的な例としては、看護師・保育士・介護福祉士などの養成課程のほか、近年はIT・データ分析・AI・Webデザインなど、リスキリングが求められる分野の講座も対象に加わっています。

支給内容は3段階に分かれています。

(1)受講中に、受講料の50%が給付される(年上限40万円、最大3年で120万円)
(2)受講修了後、資格試験に合格し就職(または在職)していれば、追加で20%給付
(3)さらに、2024年10月以降に受講開始する講座については、訓練前後で賃金が5%以上アップした場合に、追加で10%が支給される制度が新設されます。これにより最大80%の費用補助が可能となります。

この制度は、特にキャリアチェンジを目指す方や、働きながら国家資格取得を目指す方にとって非常に心強いサポートになります。

教育訓練給付制度の対象講座は年々増加しており、厚生労働大臣の指定を受けた講座は2025年7月時点で2757講座。この5年で約2倍に増えています。

また、夜間・週末・オンライン対応の講座も多く、働きながらでも学びやすい環境が整っています。

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