はじめに
Aさんが選んだ「ベターな」選択肢とは?
では、Aさんはどのような判断をしたのでしょうか? Aさんは現在、同い年の夫と2人暮らしで、夫は定年退職して就労の予定はありません。65歳からの公的年金受給までの5年間は、Aさんのパート収入、夫の退職金と企業年金、預貯金を取り崩して生活する予定です。
当初、10年間の年金受取(60万円×10年)を予定していましたが、「どうせ取り崩すのなら、5年間で多めに受け取れた方が安心では?」と考えるようになったといいます。ただし、受け取り期間の変更については手元のお知らせに記載がありませんでした。
保険会社に問い合わせたところ、「5年での受取」も可能との回答があり、最終的に「105万円×5年(計525万円)」という受け取り方を選択。10年で受け取るより総額は75万円少なくなるものの、「5年間でしっかり年金が入る」ことが心理的に大きな安心材料になったといいます。
こうした選択肢は明記されていないことも多いため、「ない」と思い込まず、念のため保険会社に確認することが大切です。
Aさんのケースでは、65歳からの公的年金受給開始までの「つなぎ」として活用することで、預貯金の取り崩しを抑制できる効果も期待できます。
あなたにとっての"ベスト"を選ぶための3つの視点
個人年金の受け取りの正解は1つではありません。自分にとって「ベスト」な選択肢を見つけるためには、以下の3つの視点が大切です。
①ライフプラン全体で考える
・いつまで働くか
・夫婦の収入、退職金・年金見込み
・家計の収支と貯蓄額
・ライフイベントの予定と予算(リフォーム、車の買い替え、旅行など)
・将来の医療・介護費用
一覧で整理すれば必要な時期と金額が見えてきます。特に空白期間への備えは重要です。
②税金・手取り額の確認
一時所得と雑所得では税額が異なりますし、他の収入(給与・年金)との合算によって税率が上がる可能性もあります。場合によっては、受取時期をずらす、iDeCoの掛金と合わせて節税するなど、家計全体で戦略を立てることも可能です。
③「隠れた選択肢」にも注目を
契約書面に記載のないオプションも存在します。たとえば、受取期間の変更や支払い途中で一括に切り替えるなどです。これらは保険会社に直接確認することで判明することが多いため、問い合わせを怠らないことが肝心です。
安心できる受け取り方は、早めの「情報整理」から
60歳前後で迎える個人年金の受け取りは、単なる"お金の受け取り"ではなく、その後の人生設計の大きな岐路となります。目の前の手取り額だけで判断せず、「いつ・いくら・どの方法で受け取るのが自分たちの生活にフィットするか?」という視点で選ぶことが重要です。
契約から数十年が経過し、当時の担当者が変わっていることも多いため、現在の選択肢について改めて確認することから始めましょう。迷ったら、保険会社に確認を、そして専門家に相談するのも一つの手です。大切な資産を最大限活用するためにも、早めの行動をお勧めします。守り抜いた「お宝保険」を、人生の後半戦を支える“安心資金”として活かすためにも、じっくり準備を整えておきたいところです。