はじめに

2025年に入ってから、主に米国の関税政策の影響を受けて、相場にはさまざまな動きがありました。その中でも、S&P500指数は史上最高値を更新するなど、米国や世界全体の株式市場は右肩上がりの成長を続けています。

個人投資家の方々にとっては、2024年からの新しいNISAのスタートによって、長期投資に取り組みやすい時代になったといえます。NISA口座数の推移をみると、2025年3月時点のNISA口座数は、2023年末と比べて500万口座以上増加しています(「NISA口座の利用状況に関する調査結果」(金融庁)より)。

ただし、2024年以降、相場が急落する場面が2回ほどありました。実際に取り組んでみると、投資を続けることは意外と難しいと感じた方もいらっしゃると思います。

長期投資では、世界経済が中長期的に成長を続けていくことを想定し、できるだけ長い時間をかけて世界全体に投資することで、リターンを得ることを目指せます。それでは、長期投資を成功させるには、どうすればよいのでしょうか。挫折しやすいタイミングを予め知っておくことが、重要なポイントです。「長期・積立・分散」の資産運用を自動化したサービス「ウェルスナビ」では、40万人を超える利用者の方の行動データを分析してきました。今回の記事では、データ分析によってわかった、長期投資を諦めやすい3つの場面を紹介します。


第1の場面:資産運用をはじめたばかりで、リターンがプラスとマイナスを行き来しやすいタイミング

資産運用を始めたばかりのタイミングで、最初に挫折しやすい場面が待ち受けています。

資産運用を始めたばかりの頃は、わずかでも資産が増えると、安心します。反対に、始めて早々にリターンがマイナスになると、「やっぱりやらなければよかった」と不安になります。

最初の半年から1年くらいは、リターンがゼロ近辺でプラスとマイナスを行き来することが続くことが多いものです。その度に一喜一憂を繰り返していると、心理的に疲れてしまい、それ以上投資を続けられなくなる方がいます。

どうして長期投資のつもりで始めたのに、初期に挫折してしまうのでしょうか。

まず、長期投資の効果は、すぐにではなく、時間をかけて表れます。そのため、投資をはじめたばかりのタイミングでは、効果を実感できる機会が少ないといえます。資産がわずかに増えたり減ったりを繰り返すと、投資の効果は実感しづらく、資産が一時的に減ることによる不安が先行してしまうのです。

また、行動経済学の研究によると、リターンがゼロ近辺を行ったり来たりすることが、感情に大きな影響を与えやすいといわれています。

たとえば、昨日はわずかにプラスのリターンだったのが、1日で資産が減って、今日はマイナスになったとします。すると、非常に大きなストレスを受けやすいのです。ただし、これはリターンがゼロ付近を行ったり来たりする場合に限った話です。リターンがゼロから遠ざかるほど、日々の増減には一喜一憂しなくなるものです。

第2の場面:金融危機の影響で、リターンが急に減っていくタイミング

最初の挫折タイミングを乗り越えて、リターンがゼロから離れて安定し始めても、第2の罠がいつ現れるかわかりません。

金融危機が発生すると、プラスで安定していたリターンは急に減っていきます。突然起こった金融危機によって、それまでせっかく積み上げてきたプラスのリターンが減っていくのを見ていると、資産を売却したくなります。たとえば、2025年4月には、米トランプ大統領による新たな関税政策の発表を受けて、米国を中心に株価が急落しました。このタイミングで、資産を売ってしまいたくなった方も多いのではないでしょうか。

しかし、金融危機が発生したタイミングで焦って資産を売ってしまうのではなく、そのまま続けていくことで、危機の影響を乗り越えて資産を増やしていくことを目指せます。

長期的な目線でみると、これまで、世界経済は金融危機を乗り越えて成長を続けてきました。過去30年、世界経済全体に分散投資を行った場合のシミュレーションを見てみましょう。この間、大体6回の金融危機が発生しました。

過去の金融危機においては、下落相場が続いた後、相場は元の水準を超えて回復しています。金融危機で一時的に相場が下がると、いったん資産を売って、上がるタイミングで再投資したほうが合理的だと考える方もいるかもしれません。しかし、相場の先行きを見通すことはプロでも難しく、再投資のタイミングを判断することも同様に、簡単ではありません。

下がったから売ってしまうのではなく、長期的な成長を見据えて、資産を持ち続けるほうが合理的だといえます。

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