はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
ポートフォリオについてご相談です。派遣社員として年収400万円、賃貸マンションの家賃が年収180万円あります。現在の資産配分は、株式の比重が高過ぎるのか、相場が下がると落ち着きません。また、売るタイミングがよくわかりません。目標の年間利回りは何%とすればよいのでしょうか? 今年は約10%としていました。コンサルタントの方に見てもらい、詳しいアドバイスをいただこうかとも思っています。ぜひアドバイスください。
【現在の金融資産】
預貯金:250万円 3.6%
国内株式:800万円 11.5%
投資信託:2,000万円 28.5%
FX:100万円 1.5%
不動産:2,500万円 37.2%
年金:1,200万円 17.5%
住宅ローン:-500万円
合計:6,300万円
(40代後半 独身 女性)
内藤: ご質問ありがとうございます。
6つのグループ分割で現状認識
40代後半で収入が400万円というのは平均的な数字ですが、資産が6,300万円というのは非常に恵まれた環境だと思います。そこでポイントは、潤沢なストックを上手に活用してフローを充実させることになります。
現在保有されている投資信託に、どのような資産を組み入れているのかは正確にわかりませんが、ご相談の内容から株式比率が高いものと思われます。
そこで最初にやるべきことは、現状認識です。株式、投資信託、FXといった商品ごとの分類ではなく、それぞれの投資対象が持っているリスクによって資産分類をしてみることが重要です。
私は資産を「円の株式」「円の債券」「外貨の株式」「外貨の債券」「現金・流動性資産」「その他の資産」という6つに分類することを提唱しています。
まずは、お持ちの資産をこの6つに分類し、それぞれの配分比率を把握してみてください。
信用が増えれば、借入の選択肢も
次に考えるべきは、フロー収入につながる不動産の比率をどうするかです。
現在すでに5%程度の利回りで不動産投資を開始されていますが、全体の資産規模がそれなりに大きくありますので、その信用力を使い、借入をしてレバレッジをかけることも検討できます。
例えば3,000万円程度の借り入れを行って、9,300万円の資産をすべて不動産に回し、5%で運用できれば年間の金利収入は450万円以上になります。
ローンの金利返済によるマイナスはありますが、レバレッジをかけることによって、より大きな収入を得ることができるようになります。
一般に年齢が高くなればなるほど、株式のような価格変動の大きなキャピタルゲインを狙う資産比率を低くして、不動産のようなインカムゲインが確実に狙える資産の比率を増やしていくべきだと思います。
円安リスクにも備えよ
また、不動産の一部は海外不動産にすべきだと思います。円資産だけで資産運用をするのではなく、海外不動産を組み合わせることによって円貨と外貨のバランスが改善し、円安リスクに備えられるようになります。
海外不動産の場合、レバレッジを高めることは難しいですが、賃貸収入は国内に比べて高くなる傾向にあります。また家賃が上昇傾向にあることも珍しくなく、今後の家賃収入アップも期待できます。
海外不動産投資の対象国としては、アメリカ、マレーシア、タイ、フィリピン、カンボジア、バングラデシュなどがありますが、リスクとリターンのバランスを考えて物件選択をすることが重要です。また購入前に必ず現地に行って、現物を見るだけではなく管理会社や販売会社のクオリティをチェックしておくべきでしょう。
最終的にローンの借り入れ金額を含めて、投資金額が9,000万円になったと仮定するとこのような配分も考えることができます。
・金融資産 1,000万円(日本と海外の株式のインデックスファンドを中心に)
・国内不動産 3,000万円(平均利回り5%程度)
・海外不動産 4,000万円(平均利回り7%程度)
インカム資産の比率を高めることによって毎月のキャッシュフローが改善し、将来に対する不安も消えると思います。上記例は概算ですので、詳しい手法については信頼できる専門家に有料コンサルティングを受けることをおすすめします。悔いのない資産活用を行ってください。