はじめに
筆者は仕事柄、「これから投資を始めたい」という初心者の方から、数十年も金融業界にいらっしゃる投資のプロまで、さまざまな方とお話しさせていただく機会がありますが、投資で成功を収めている人とそうでない人との差は「投資の解像度」の違いにあります。
「投資の解像度」を上げるためには、「投資理論」「行動経済学」「地政学」「リスク管理」の4つの視点を学ぶ必要があります。
その4つの視点を体系的に学び、鉄壁の投資術を身に付ける一冊として、8月29日に「投資の解像度を上げる 超インフレ時代のお金の教科書」をクロスメディア・パブリッシングから上梓します。
今回は、「投資で本当にお金は増えるのか」「日経平均10万円台は本当に来るのか」、投資の解像度を上げて一緒に考えていきます。
投資で「本当に」お金は増えるのか
日本では長らく投資が根付いていませんでしたが、近年は投資をする人が増えてきています。しかし、こんな状況でも投資で本当にお金は増えるのか、半信半疑の人もいるかもしれません。
まず、絶対に増えないと思っているなら、投資はしないほうが良いことになります。しかし、そうなるとモノの価値は常に一定であるといっているようなものです。
そんなことはないですよね。りんご1個100円だとしても、収穫できる量に限りがある状況で、欲しい人がたくさんいるならば、りんご1個の値段は高くなります。なぜならば、りんご1個の価値が上がるからです。値段を高くしても売れるというわけです。
企業の価値も同じです。世の中に需要のある商品・サービスを生み出し、業績も堅調に推移していけば、企業価値も向上していきます。そうした企業が、証券取引所に上場している株式会社であれば、株価は高まっていきます。なぜならば、その企業の株に投資をすれば、将来的にリターンが得られると期待できるからです。株式投資のリターンには、安く買って高く売ったときの「売却益(キャピタルゲイン)」だけでなく、「配当金(インカムゲイン)」もあります。配当金は、企業の当期純利益が原資です。他にも株主優待があります。
そうした企業を選んで投資をするのは難しい、ということであれば、複数の企業・地域に投資をするのはいかがでしょうか。俗にいわれる、「世界全体に投資をする」ということです。「分散投資」という意味合いもありますが、それよりも、世界全体に投資をして平均点を取りにいくということです。
では、世界全体はこれからも成長するのでしょうか? 筆者はこれからも、世界経済は成長し続けると考えています。
世界経済が成長するかどうかは、人口動態で考えるのがシンプルです。そして、その人口動態は中長期の未来を考える際、最も予測が立てやすく、予測のブレが小さい事象の1つです。2025年の世界人口は80億人を超えており、国連「世界人口推計(2022年)」によると、2058年には100億人を突破すると推計されています。また、「世界人口推計(2024年)」では、2080年代半ばに人口が103億人に達してピークをつけると推計されています。
日本だけで見れば人口が減っていますが、世界的にはまだまだ人口が増える見通しです。人口が増えれば、消費が増え、その消費を支えるために生産も増え、経済は拡大していきます。「世界人口増大→経済拡大→企業業績拡大→株価上昇」という流れで世界全体は成長していくでしょう。
長期的な世界経済の成長の流れ
著書「投資の解像度を上げる 超インフレ時代のお金の教科書」より
また、国際通貨基金(IMF)が発表している「世界経済見通し」(2025年4月改訂版)では、2025年の世界経済成長率が2.8%、2026年は3.0%と予測されています。これは過去(2000年〜2019年)の平均3.7%を下回っているとはいえ、成長は続く見込みです。世界経済成長率は1980年以降、おおむね年3〜4%で推移しています。
今後も経済が成長していくのであれば、投資をしていたほうがお金を増やせると考えられます。フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏は著書「21世紀の資本」のなかで「r>g」という不等式を掲げています。
これは、投資のリターン(r)が経済成長率(g)を常に上回ることを示したものです。つまり、今後も長期間にわたって投資を続ければ、年3〜4%を超えるリターンが得られる可能性が高いということを示しています。
「日経平均10万円台」は本当に来るのか?
2024年2月22日、日経平均株価は1989年末につけたバブル期の最高値、3万8915円を34年ぶりに更新しました。バブル崩壊後の景気低迷期を指す「失われた10年」がやがて「失われた20年」「失われた30年」になるなか、もう2度と届くことはないかもしれないという天井を破った瞬間でした。その後も市場は堅調で、2024年7月には一時4万2000円台まで上昇しました。
しかし、2024年8月には「日本版ブラックマンデー」による下落、2025年4月には「トランプショック」による下落に見舞われました。2025年7月時点で、日経平均株価は3万9000円台の後半になっています。
過去の市場に照らせば、日経平均株価は現状、比較的高値圏にいることがわかります。「これから投資をするのはもう遅いのでは」「高値つかみになってしまうのでは」と心配になる人もいるかもしれません。
しかし筆者は、長期的には日経平均株価がさらに上昇して、「日経平均10万円台」になる日がくると考えています。筆者だけでなく、日経平均株価はいずれ「5万円になる」「10万円になる」「30万円になる」などと、これまでの水準を超えて値上がりすると考える専門家は結構います。
その理由をひとことでいうと「インフレになるから」です。具体的に確認してみましょう。