はじめに

牛丼チェーンの双璧といえば、吉野家とゼンショー(すき家)。さぞやコメ価格の高騰で苦しんでいるかと思いきや、2025年8月12日時点で吉野家株は約3,417円、ゼンショー株は約9,201円と、ともに52週高値(吉野家3,435円/ゼンショー9,749円)に迫る水準にあります。

一見すると「同じ業界だから同じように株価が上がっている」と思われがちですが、実は株価を押し上げている原動力は異なります。そこで、直近決算と事業構造から、その違いを深掘りします。


吉野家は決算翌日に株価が6.5%上昇

まずは、2社の共通点から。両社ともコロナ禍後の外食需要回復、原材料価格の安定傾向、DX化による人手不足の改善といった外部環境の好転を享受しています。加えて想定以上に円安基調が続き、海外売上の円換算額を押し上げ、インバウンド需要も国内店舗の売上増に貢献。この「追い風」をどう活かすかは企業戦略次第で、その違いが株価の方向性に現れています。

まずは7月8日に2026年2月期第1四半期決算を発表した吉野家から見ていきます。

売上高522億円(前年比+9.8%)、営業利益10.56億円(+20%)の増収増益。都市部や観光地の既存店でインバウンド需要が顕著に回復し、期間限定メニューやセット商品の強化が客単価を押し上げました。経常利益は12.4億円(+0.3%)と微増にとどまりましたが、これは販促や店舗改装への先行投資によるもので、本業の収益力は堅調。営業利益率は前年の1.9%から2.0%へ微増し、増収効果を利益に結び付けています。

事業別では、売上全体の約7割を占める吉野家事業が安定成長し、はなまるうどん事業は高収益率で二桁増益、海外事業もアジア市場で既存店売上が改善傾向。国内では高回転型やテイクアウト・デリバリー特化型の新店舗フォーマットを展開し、訪日客需要にも対応。足元の業績の堅調さが評価され、決算発表翌日の株価は6.5%上昇。それ以降もじりじりと上昇しています。

画像:TradingViewより

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