はじめに
異物混入事案から復活のすき家
次に、8月8日に2026年3月期第1四半期決算を発表したゼンショー。
売上高2,904億円(+8.9%)と増収。既存店の客単価上昇と海外展開の拡大が寄与しました。特に「すき家」ではセットメニュー強化や価格改定が奏功し、客単価は約3〜4%上昇。円安効果もプラスに働きました。しかし営業利益は157億円(-8.7%)、経常利益155億円(-8.5%)、純利益80億円(-25.7%)と減益。主因は「すき家」での異物混入事案対応コストで、全店一時休業や営業時間短縮、衛生管理投資が重くのしかかりました。
画像:TradingViewより
一見、芳しくないように見える内容ですが、決算発表翌営業日の株価は15%以上の上昇。この背景には、投資家が足元の数字よりも将来の成長シナリオを評価していることがあるとみられます。
ゼンショーは業態別に「グローバルすき家(国内1,969店/海外652店、売上構成比26%)」や「グローバルはま寿司(国内639店/海外96店、売上構成比21.9%)」などの主力ブランドを抱え、国内外で拡大中。さらに、なか卯、ココス、ビッグボーイなどの多業態戦略を展開し、DX・AIによるオペレーション効率化にも積極的です。
通期では売上高1兆2,235億円(+7.6%)、営業利益820億円(+9.1%)の増収増益を予想。「一時的な痛みはあっても、中長期の成長基盤は盤石」という見方が株価を支えています。
両社とも株価は堅調ですが、ドライバーは異なります。吉野家は現時点での業績改善が評価される安定型。一方、ゼンショーは短期的な減益にもかかわらず、未来の成長ストーリーで投資家の期待を集める成長型。
PERは吉野家が52倍、ゼンショーが35倍で、吉野家の方が割高感はあるものの、信用倍率では吉野家が0.08倍と極めて低く、短期的には売り方の買い戻しによる踏み上げ相場になる可能性も。上場来高値更新となれば買いが買いを呼ぶ展開も見込まれ、短期勝負なら吉野家優勢といえるでしょう。
一見同じように上昇している牛丼チェーン2社ですが、その背景には明確な違いがあります。投資判断では、この内実を見極めることが肝要です。今後は、吉野家では既存店のさらなる伸びや原材料コスト動向、ゼンショーでは多業態・海外展開の成果に注目すべきでしょう。
※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。
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