はじめに

8月15日、TENTIAL(325A)が通期業績予想の大幅上方修正を発表し、株価は翌営業日(8月19日)から2日連続ストップ高を記録。一時は4,000円を割り込んでいた株価が、突如として急騰し、再び注目を集める展開となっています。

ただ、私はこのタイミングであえて“買わない”という判断をしています。今回はその理由について、以前書いたテンシャル売却の背景も振り返りながら解説したいと思います。


じつはこの銘柄、以前に「売却後にストップ高になったが、後悔していない」という記事を書きました。私は普段、決算をまたぐポジションは原則として取らないスイングトレードをしています。TENTIALも例外ではなく、決算前に一度売却。その後、まさかの2日連続ストップ高という結果になりました。

とはいえ、当時の判断は割高感と需給を考慮した上でのもの。 その後、株価は実際に4,000円を割り込む水準まで下落し、「売って正解だった」と思える局面もあったのです。

今回の急騰は「業績」に裏打ちされたもの

8月15日に発表された業績の上方修正は、まさにポジティブサプライズでした。同社は2025年8月期(※変則7カ月決算)について、売上高を95.0億円→110.1億円、営業利益を6.4億円→11.4億円と大幅に上方修正。純利益も従来の予想を74.4%上回る8.09億円に引き上げました。営業利益、純利益ともに70%を超える修正幅は、さすがに想定外で、翌営業日のストップ高は当然の反応でしょう。

母の日・父の日を中心としたギフト需要が牽引し、主力のリカバリーウェア「BAKUNE」が引き続き好調。広告費の積極投入も奏功し、業績は力強く推移しています。参考として開示された12カ月換算の数値でも、売上高192.6億円、営業利益22.5億円と、成長トレンドに変わりはありません。

気がかりなのは、「信用買い残が高水準にある」こと

それでも、私は今回の急騰に飛び乗るのは危険だと感じています。最大の理由は、需給のゆがみです。具体的には、「信用買い残が依然として高水準にある」点がどうしても気がかりです。

5月以降、株価が調整していたにもかかわらず、信用買い残はあまり減っておらず、高水準をキープ。8月8日時点で信用買い残は1,012,900株。これは発行株数7,547,100株に対して13.4%に相当しており、含み損を抱えた信用組が多数存在していることになります。

信用買いが多い=それだけ個人投資家が将来の株価上昇に賭けている状態なので、一見ポジティブにも見えますが、買い残が膨らんでいる状態で株価が下落または横ばいになると、多くの投資家が含み損を抱えることになります。

信用取引で買っている投資家は、株価が反発したタイミングで「とにかく逃げたい」「同値撤退したい」と考えることが多く、これが戻り売りの壁となります。そのため、どんなにポジティブな材料が出ても、株価が上値で押し戻されやすい状況がしばらく続く可能性があるのです。

また、今回のような急騰局面では、信用新規の“飛びつき買い”も入りやすく、需給のバランスがさらに不安定になります。反落時には一斉に売られ、急落しやすい地合いになる可能性が高く、冷静に分析すれば、「ここからの急上昇は一筋縄ではいかない」と判断できます。株価が一段高するには、買い方のポジション整理=信用買い残の圧縮がまず必要になる──そう考えています。

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