はじめに

2025年:利下げの特殊性と「予防的」性格

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2025年の利下げは、リーマンショックやコロナのような非常事態対応ではなく、「政策の正常化」から「やや緩和へ」と移行する穏やかな性格を持っています。これが市場に安心感を与え、「資金を株式へ」という流れを後押しする可能性があります。

さらに、コロナ以降の「カネ余り」が続いており、株式や金、人件費、不動産といった資産価格は相対的に高止まりしています。そうした状況下での利下げは、過去の緊急対応とは異なる投資環境を形作っています。

2022年以降、FRBはインフレ退治を最優先に積極的な利上げを行ってきました。物価上昇率は落ち着きつつあるものの、企業や家計の金利負担は重く、住宅ローンやクレジット市場にブレーキがかかっています。そこでFRBは「景気を損なわずにソフトランディングを図る」ため、利下げに転じる姿勢を示しています。

利下げのタイミングと相場サイクルの関係については、本連載の解説記事も参照ください。

金融相場の再来と資金流入の行方

金融相場とは、実体経済や企業業績が改善する前に、金融緩和によって資金が市場に流入し、株価が上昇する局面を指します。利下げにより調達コストが低下すると、株式や不動産などリスク資産への資金流入が加速しやすくなります。

特に株式市場では、AIなど成長期待の大きい分野に投資資金が集中しやすい傾向があります。金利が低下すると、将来の利益を現在価値に換算する際の割引率が下がるため、理論上の株価は上昇しやすくなります。とりわけハイテク株や成長株のように、将来の利益成長が大きく見込まれる銘柄は恩恵を受けやすく、市場全体の株価指数を押し上げる要因となります。

すでにナスダックやSOX指数は連騰を続けています。過去の事例を見ても、利下げ開始からおおむね1年間は株価が上昇基調を示すケースが多く、今回も同様の展開が期待される局面にあるといえます。

投資家が押さえるべきリスクと戦略

利下げ局面は、順風ばかりではありません。「利下げが来たから全力で株を買う」ではなく、「利下げ局面ではどんなリスクがあるのか」を冷静に見つめる必要があります。

具体的には、流動性相場の逆回転や政治イベント、地政学リスク(台湾情勢、中東、欧州の不安)、企業業績の伸び悩みによる失望売りなどのリスクを把握しておきましょう。キャッシュポジションを一定程度保持しながら、ドルコスト平均法や分散投資を継続することが肝要です。

投資家として大切なのは、歴史から学び、現在を読み解き、未来に備えることが2025年の金融相場を乗り切る最大の戦略となるでしょう。

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