はじめに
時代を見極め、現状維持を目指す
2006年のオープンから12年目を迎えた「百年」。2017年8月には、「百年」から徒歩1分の場所に、よりローカルで、より自由なOLD/NEWな書店「一日」をオープン。そんな「百年」にとっても未来とは? これから古書店を開くなら、ネット? それとも実店舗? 気になるそれぞれのメリットも教えてもらった。
樽本:この12年で感じる変化と言えば、お客さんが変わってきましたね。ライフスタイルが変わって、吉祥寺から離れた方もいれば、学生の頃よく来ていたという方が、30代になり、社会の一線で活躍し始めて、本を売ってくださったりする。別の場所でお会いした方に、「よく行ってました」と言ってもらえたり。
そういうことは、とてもうれしいですね。誰かの記憶に残るというのは、すごく幸せなことなので。
「一日」については、「場所が空いたからどうですか?」とたまたまお声がけいただいて。できるときに、新しいことを始めようと、オープンしました。積極的に展示やイベントを行い、コミュニケーション色の強い場にしていきたいと思っています。
今後の目標は、現状維持です。今、どういうものが求められているかを、ちゃんと見極めて、それを維持していきたいなと思います。
それは、今までもやってきたことですが。それを繰り返して、やっていければなと。感性を鈍らせることなく、やっていきたいですね。
これから古書店をオープンしたい方にアドバイスするとしたら、兼業ではなく、古書店だけでの経営を考えているなら、東京古書組合に入ることをおすすめします。
在庫を抱えたときの“逃がし方”はすごく大切です。東京古書組合に入ると、古本市場で在庫を売ることができますし、組合の運営しているサイト「日本の古本屋」でのネット販売もあります。販売のチャンネルが増えるんですね。
古書市場に行けば知らない本を知るチャンスが増えますから、楽しみながら仕事ができます。また、同業他社との出会いもあります。彼らはライバルでもあるけれど、仲間でもある。モチベーションの部分でのプラスも大きいですね。
最近は、ネットで古書店をオープンする方も多いですよね。一番多いのは、Yahoo! オークションで、次がamazonに店舗もつケース。古書組合にも、ネット古書店の方もたくさん加入していらっしゃいます。
ネット古書店のメリットは、家賃がかからないところ。その分だけ、在庫をもつこともできます。ネットの方がスタートはしやすいですよね。ネット店舗から始めて、実店舗をもつ方も多いです。
そして、本は好きだけれど、接客が好きではないという理由でネット古書店という形を選ぶ方も、意外とたくさんいます。
「百年」も、古書組合のサイト「日本の古本屋」と、自前サイトでネット販売を行っていますが、メインは店舗。買い取りや販売を通じ、お客様と接することで学ぶことがたくさんあります。人と本との出会いを大切にしたいと思っています。
古書の流通の仕組み、ファンをもつ個人店経営の秘訣、そして、本の世界の奥深さ。昨今は、古書店、新刊書店を問わず、個性派が増えています。
樽本さんの話を読むと、そんな書店を巡るときも、今までとは少し違う視点を持てるかもしれません。
樽本樹廣さん
1978年生まれ。株式会社百年計画 代表取締役。東京都古書籍商業協同組合理事。
OLD/NEW BOOKSELECTSHOP「百年」
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-2-10 村田ビル2F
TEL:0422-27-6885
休日:火曜
営業時間:12:00~21:30
http://www.100hyakunen.com/
「一日」
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-1-3 石上ビル1F
TEL: 0422-27-5990
休日:火曜
営業時間:12:00~20:30