はじめに
久しぶりにサイゼリヤ(7581)が株式市場で注目を集めています。10月15日に発表された2025年8月期の本決算を受けて、翌営業日には一時ストップ高(買い注文が殺到して取引が停止される状態)に迫る急騰を見せました。
物価高が続く中、庶民の味方「サイゼリヤ」が脚光を浴びるのは、投資家としても納得ですが、ここから長期目線で投資してもよいのか気になるところです。まずは本決算の中身を確認してみましょう。
決算の概要:好業績・増配・強気予想の三拍子
売上高2,567億円(前年比+14.3%)、営業利益154億円(+4.3%)と、売上・利益ともに過去最高を更新。これに加えて、配当も1株あたり25円から30円へ増配となりました。さらに来期(2026年8月期)も、売上高2,763億円(前年比+7.6%)、営業利益190億円(+22.6%)と増収・増益の見通しを発表しています。
この「好業績+増配+強気予想」の三拍子が揃ったことが、株価急騰の引き金になったと考えられます。
過去の業績から見るターニングポイント
サイゼリヤは2000年代前半に急成長を遂げ、リーマンショックの際も大きくは崩れませんでした。しかし、25年間ずっと順風満帆だったわけではなく、その間には注目すべきターニングポイントが3回ありました。
① 2013年〜2015年:利益率悪化と構造改革前夜
売上高は増加傾向にあったものの、営業利益・経常利益は大幅に減少。外食産業全体における円安・人件費の上昇、物流費の増加が背景にあります。実際、2010年には14.4%あった営業利益率が、2014年には4.3%まで低下しており、急激な環境悪化が見て取れます。
② 2020〜2021年:コロナショックで営業赤字に転落
2020年には、2000年以降で初の営業赤字に転落。翌2021年も赤字が続きました。当社だけでなく、外食業界全体がもっとも厳しい局面を迎えました。
③ 2022年以降:収益構造の強化が顕在化
コロナショックを乗り越えたサイゼリヤは、より競争力を高めて復活。2023年8月期には営業利益が前年比17.1倍の72億円と黒字転換し、翌2024年8月期は148億円まで回復。以降、業績は順調に拡大し、2025年8月期には過去最高益を更新。2026年も安定成長が見込まれています。
なぜここまで業績が回復したのか?
「サイゼリヤ=安い」というイメージがありますが、それだけが強さの理由ではありません。QRコードを使ったセルフオーダーの導入、朝食メニューのテスト展開、新たなエリアへの出店、海外進出(ベトナム1号店)など、業務効率化と成長戦略を同時に進めている点が特徴です。
また、価格を据え置きつつ人気メニューの品質を高めるなど、ブランド力の維持にも力を入れており、ファン離れを防いでいるのも頼もしいポイントです。
ちなみに、筆者の家の近所にもサイゼリヤがあり、娘たちが小さい頃からよく利用していました。大きくなってからは訪れる機会が減りましたが、たまに行くと「サイゼリヤ、最高!」と思わせてくれるクオリティと安さがあります。行くたびにこの感動を提供してくれるお店は、他にそうそうありません。これは、まさに唯一無二の強みでしょう。