はじめに
以前、6月16日付けの記事で、2025年上半期における日本市場の活況について言及しました。その中で、サンリオ(8136)や、ビットコインの保有・運用を手掛けるメタプラネット(3350)が一時的に全市場の売買代金トップを記録した事例をご紹介しました。これらの現象は、近年の金融市場における取引の変化を象徴しています。
参考記事:「サンリオ」「メタプラネット」が全市場で売買代金トップに それぞれの要因とは
近年の市場を席巻しているのは、AIを活用したアルゴリズム取引の急速な拡大です。コンピュータプログラムが株価や出来高などの市場データを基に、事前に設定されたルールに従い自動で売買注文を執行するこの取引方法は、人間には難しい高速取引を得意としています。現在、東京証券取引所の売買の約8割をアルゴリズム取引が占めるといわれており、その進化が前述のサンリオやメタプラネットが全市場の売買代金トップになった背景にあると感じています。
ソフトバンクグループの売買代金急増を支える2つの要因
先週、また一つ、驚きの出来事がありました。ソフトバンクグループ(9984)が2025年10月22日、過去最高となる売買代金1兆0332億円を叩き出しました。これは同日のプライム市場全体の売買代金の実に16.9%を占める規模です。
では、なぜソフトバンクグループが、過去最高の売買代金を記録するにいたったのでしょうか。その要因は、主に以下の2点にあると考えます。
1. OpenAIを巡る期待値の急騰
一つ目の要因は、ソフトバンクグループが傘下の投資ファンドを通じて出資を行うOpenAIの企業価値の増大です。
OpenAIは、2022年に公開された対話型AIモデル「ChatGPT」により世界的な注目を集めました。ソフトバンクグループは2024年9月、同社への出資で合意し、さらに2025年4月には最大400億ドル(約6兆円)の追加出資を公表しました。
特に、2025年8月に米調査会社CBインサイツの調査で、OpenAIの企業価値が3月時点から約7割増加し、5000億ドル(現在の為替で約76兆円)と評価されていると報じられたことが、ソフトバンクグループ株の売買代金急増の一因でしょう。
2. 半導体設計子会社アーム(ARM)の株価堅調
二つ目の要因は、ソフトバンクグループ傘下の英国の半導体設計会社、アーム(ARM)の株価の堅調さです。
ソフトバンクグループは2016年にアームを買収し、その後NVIDIAへの売却を試みるも各国の規制当局の承認が得られず断念。2023年9月にナスダックに上場させました。アームは、2025年後半に独自のAIチップの量産を予定しており、大規模データセンター向けCPUの開発も計画されています。
10月24日現在、アームの時価総額は世界で79位の1764億ドル(約27兆円)に達しています。