はじめに

2024年はインバウンド回復の波にノリ、スター銘柄ともいえた三越伊勢丹ホールディングス(3099)ですが、2024年7月につけた3,674円を高値に株価は低迷を続けていました。当社は、10%割引の優待券がもらえることもあって、個人投資家からも人気が高い銘柄です。長期保有を決め込んでがっちりホールドしている投資家は、さぞやモヤモヤしていたことでしょう。


パッと見の業績は冴えないが…

そんな当社の株価が、ついに反転?と湧き立ちました。

きっかけは、2026年3月期第2四半期決算発表です。売上高2,538億円(前年比-3.9%)、営業利益314億円(前年比-9.8%)と減収減益も、通期の経常利益を740億円から770億円へと上方修正。配当予想を60円から65円に引き上げました。

パッと見の業績は冴えない印象ですが、前年のインバウンド特需の反動減もあるためそこは目を瞑りたいところ。それよりも当社が重要視している顧客KPI(識別顧客数、300万円以上購入者売上)が拡大中です。これは、海外顧客売上が為替や前年の高水準の反動で減少する一方、「個客業」への転換を進める経営戦略が奏功し、国内の識別顧客(カード会員等)売上が大きく伸びたことが背景にあります。こういった顧客基盤の質の向上が投資家からも評価されました。

また、財務基盤も安定しており、自己資本比率は49.7%、有利子負債依存度はわずか7.4%と極めて低水準。キャッシュフローも堅調で、300億円規模の自己株買いを実施するなど、株主還元にも積極的な姿勢を見せています。

第1四半期決算は、営業利益156億円(前年比-17.1%)と苦しいスタートだったため、第2四半期決算では減益幅が縮小していることも好感されました。

決算発表翌日、株価は4.72%上昇、日足チャートでは5日、25日、75日移動平均線をすべての線の上に乗ってきました。いよいよここから反撃開始か!と喜んだのも束の間、翌日にはなんと11%下落。

株価反転からの急落、その背景

急落の要因は、中国と日本の外交関係の悪化報道です。

11月7日、高市早苗首相が「台湾有事は日本の存立危機になり得る」と国会答弁で言及したことを契機に、日中関係に緊張が走りました。中国政府はこれに反発し、自国民に対して「日本への渡航を自粛せよ」と指示を出し、さらに日本への留学についても考慮するよう促しました。

観光庁によると25年1〜9月の中国人客の消費額はおよそ1兆6,443億円。訪日外国人客全体のおよそ4分の1を占めます。実際、日本への団体旅行や航空便のキャンセルが起きており、インバウンド銘柄の代表である百貨店株全体が売られる展開となりました。

とくに三越伊勢丹は、伊勢丹新宿本店や三越日本橋本店を中心に訪日外国人による高額消費の比率が高く、政治・外交の影響を受けやすい構造にあります。直近では中国事業の一部撤退もあり、中国市場との接点が限定的になっているとはいえ、インバウンドに対する市場の警戒感は根強いものです。

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