はじめに

近年、「デジタル終活」は、高齢者だけでなく現役世代にも必須のテーマとなっています。スマートフォンやクラウドサービスが生活の基盤となった現代において、デジタル資産の整理は、紙の財産整理以上に複雑で緊急性の高い課題です。中年期は、判断能力や記憶力が確かなうちに、未来の家族の負担を軽減できる最適なタイミングです。

デジタル終活を先送りにすると、ネット銀行の残高が引き出せなくなったり、プライベートなデータが流出したりするなど、遺族に多大な迷惑をかけてしまいます。ここでは、中年が今すぐ取り組むべきデジタル終活の具体的な10項目をご紹介します。


1.パスワードとIDのリスト化・共有準備

ネットバンキングや証券口座、クラウドサービスなど、重要なデジタル資産へのアクセス情報は、本人以外にはロックされていて解読が非常に困難です。万が一の時、家族がこれらの情報にアクセスできなければ、相続手続きや財産の把握が滞り、多大な時間と費用、精神的負担をかけることになります。

現在の記憶力が確かなうちにリスト化し、エンディングノート等に記して保管場所を家族に伝えておくことで、トラブルを未然に防ぎます。

2.デジタル金融資産(ネット口座・仮想通貨)の整理

1に内容は似ていますが、いわゆる「資産」に関してのデジタル終活です。ネット銀行やネット証券、特に仮想通貨(暗号資産)は、物理的な証書がないため、ログイン情報が失われると財産そのものが永久に引き出せなくなるリスクがあります。

中年期は資産形成のピークにあたるため、保有する金融資産の全体像とアクセス情報を正確にまとめ、緊急時の対応策を明確化しておく必要があります。これにより、大切な資産を確実に家族に引き継ぐことができます。

紙の終活ノートとは別に、デジタル資産に特化した情報(アカウント名、パスワード、連絡先など)を一覧にしたノートを作成します。高齢になってからでは記憶が曖昧になったり、タイピングが困難になったりする可能性があります。中年期の判断力が確かなうちに作成し、定期的に更新する習慣をつけておくことで、情報の一貫性を保ち、家族が迷うことなく必要な手続きを進められるようになります。

3.有料サブスクリプションサービスの棚卸し

映画・音楽配信、アプリのプレミアム機能、オンライン学習など、月額または年額で自動引き落としされるサブスクリプションサービスは、利用実態が見えにくいものです。

死亡後、家族が契約を把握・解約できなければ、利用していないサービス費用が口座から引き落とされ続けることになります。現在利用している全サービスをリストアップし、不要なものは生前に解約することで、無駄な固定費の削減と死後の遺族の負担軽減につながります。

終活という意味だけでなく、不要なものがないか、今の自分へのチェックをするのにも良い機会でしょう。

4.家族に見られたくないデータの選別・削除

個人的な日記、プライベートな写真や動画、仕事上の機密情報など、家族に内容を知られたくないデータは誰にでもあるものです。元気なうちにPCやスマートフォン内のデータを見直し、「残すもの」と「見られたくないもの」を仕分けし、見られたくないデータは安全に完全に削除しておくことで、自分のプライバシーを守るとともに、遺族が不快な思いをするのを防げます。

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