はじめに
制度導入25年目となる本年に実施した「確定拠出年金3万6,000人調査」について、今回からテーマを分けて紹介していきます。最初のテーマは「確定拠出年金(DC)の運用はうまくいっているか?」です。
前回記事:「確定拠出年金」を老後資金と見なしていない人は多い?― 3万6,000人調査でわかったDCの現在地
DCの運用はうまくいっているか――全体像と属性別の違い
DCでの資産運用について、具体的な利回りではなく、あくまでも主観的に「うまくいっているか、いないか」を尋ねました。「普通」と答える人が38%で最も多く、「運用が好調だった」とする人も約3割にのぼりました。逆に「不調だった」人は1割未満の少数派でした。
好調だった理由として最も多かったのは「長期運用を実践したから」で、次いで「商品の選択がよかったから」「市場環境がよかったから」が続きます。逆に不調だった人は「商品の選択が悪かった」「適切なタイミングで商品を変更しなかった」「リスクに対して消極的だった」と回答しています。
長期運用を実践し、近年の市場環境の好調さを享受できた人ほど「運用はうまくいっている」と感じやすく、それができなかった人は評価が低いと考えられます。
収入、金融資産、iDeCoと企業型DC、企業規模による差
「好調3割:普通4割:不調1割」という全体の分布(残り2割は「わからない」)は、性別・年代・職業によってほとんど差はありませんでした。ただし、収入や金融資産が多い人ほど「運用が好調だった」と答える割合は増加し、年収1,000万円以上では51%、金融資産5,000万円以上では54%に達しています。
図表1は、iDeCoと企業型DCの加入者を比較したものです。iDeCoのほうが「好調」比率(青色のゾーン)はわずかに高くなっています。また、企業型DCでは企業規模が大きいほど「好調」が増え、「わからない」(黒色)が減る傾向が見られます。今後のコラムで詳しく触れますが、職場での金融経済教育の実施率は企業規模と明確に相関があり、こうした教育が加入者の運用先選択に影響し、結果として運用実感の差につながっていると考えられます。
図表1 DCでの運用はうまくいっていると思うか: iDeCo vs. 企業型DC(企業規模別)

マッチング拠出・選択制の利用者が示す高い運用実感
企業型DCでは、マッチング拠出や選択制を通じて、自分の給与から掛金を拠出する仕組みを採用している場合があります。こうした仕組みを積極的に利用している人では、「運用が好調」との回答が50%を超えていました(図表2)。一方、「導入されているが利用していない」グループと「導入されていない」というグループでは、目立った差はありませんでした。マッチング拠出や選択制を利用する人は、DCに対する理解度や関心が高く、運用との向き合い方にも違いがあることがうかがえます。
図表2 DCでの運用はうまくいっていると思うか:マッチング/選択制利用の有無

運用対象別:「投資信託」中心層の「好調」比率の高さ
ここまで読まれた方は、「結局は投資信託で運用している人が好調と答えているのだろう」と想像されるかもしれません。図表3を見ると、その推測は「おおむね正しい」といえます。ただし、投資信託を利用していても「不調」と答える人もいますし、元本確保型商品のみで運用している人でも「うまくいっている」と答える場合があります。主観的な評価であるため、世間や同僚との比較だけでなく、自分で思い描いていた結果とのギャップによっても感じ方は異なるのでしょう。
図表3 DCでの運用はうまくいっていると思うか:運用対象別
