はじめに
新NISAの開始以降、SNSでは「オルカン(全世界株式インデックスファンド)一本でOK!」という投稿を頻繁に見かけます。実際、つみたて投資家の多くが最初に選ぶ商品がオルカンです。世界中の株式に分散でき、少額から始められるうえ、信託報酬も低コスト、まさに“投資初心者の味方”といえる存在だからでしょう。
「全世界に投資しているから安心」「これ一本で分散できている」と感じる人も多いかと思いますが、数年続けていると誰もが一度はこう考えます。
「オルカン一本で本当に十分なのだろうか?」
「もし世界経済が停滞したら、どうなるのだろう?」
結論からいえば、オルカンは優秀な“土台に据え置くべき投資商品”ですが、万能ではありません。たとえば、地域の偏り、為替の影響、株式100%ゆえの値動きの大きさなど、「一本化ならでの弱点」も存在します。
この記事では、オルカンしか持っていない人が次に考えるべき“第2の柱”を、FPの視点から解説します。
オルカンは「最初の一歩」としては最適
オルカンは、先進国から新興国まで約50か国・約3,000銘柄に分散投資できるファンドです。「世界の経済成長を丸ごと取り込む」という設計は、個人投資家にとって理想的な出発点です。
実際、過去のデータを見ると、世界株式(MSCI ACWI)の年平均リターンは約5〜7%。インフレを上回るペースで長期的に資産を増やせる水準です。「とにかく積み立てを始めたい」「投資のことは難しくて考えたくない」という方にとって、オルカンは合理的な選択肢の一つといえるでしょう。ただし、「分散されている=安心」と思い込むのは危険です。分散投資はリスクを“消す”わけではなく、ならすことができるだけです。つまり、世界全体が下がれば、当然オルカンも下がります。その構造を理解せずに「一本で完結」と考えると、相場の波に振り回されてしまうのです。
オルカンの“見えない偏り”
オルカン=全世界と聞くと、「各国が均等に入っている」と誤解されがちですが、実際は、約60%がアメリカ株で構成されています。世界経済の中心がアメリカである以上、ある程度は自然な結果ですが、裏を返せば「米国依存のファンド」でもあります。
たとえば、2022年のように米国株が大きく下落し、ドル円が円高方向に動けば、オルカン全体も大きく値を下げます。つまり、為替と株価の両方が逆風になる局面では、想像以上にパフォーマンスが悪化する可能性もあるのです。さらに、オルカンは株式100%です。債券のような“守りの資産”がないため、相場が下落したときに資産を支える要素がありません。
たとえばリーマンショック時、世界株は半年で40%以上下落しました。オルカンも例外ではなく、暴落時にはそれと同等の値下がりを想定する必要があります。