はじめに
12月は相場の季節性、税金、損出し、NISAなど、投資判断に関わる要素が重なる特別な月です。本稿では、アノマリーの背景、税制の基本、損益通算や繰越控除の考え方、NISAと優待の位置づけまで、投資家が年末に整理したい4つの判断軸をまとめました。「この一年をどう締めくくるか」を主体的に考える一助になれば幸いです。
12月を特別な月に! 投資家が年末に整理したい4つの判断軸
今週、市場ではFOMCによる3会合連続の利下げ決定に加え、サプライズの量的緩和再開という大きなニュースが飛び込んできました。これにより相場はリスクオンの様相を呈しており、年末の市場動向に大きな影響を与えそうです。
このように市場が大きく動く一方で、そもそも12月は、相場の季節性、税金、損出し、NISAなど、投資判断に関わる要素が重なる特別な月です。
本稿では、足元の相場状況を踏まえつつ、投資家が年末に整理したい4つの判断軸として、アノマリーの背景、税制の基本、損益通算や繰越控除の考え方、NISAと優待の位置づけをまとめました。「この一年をどう締めくくり、来年の設計をどうするか」を主体的に考えるための指針としてご活用ください。
●1. 相場の季節性とアノマリーをどう捉えるか
12月の相場でよく話題に上がるのが「サンタクロースラリー(クリスマスラリー)」です。これは「12月のクリスマス前後から年明けにかけて株価が上がりやすい」という経験則のことで、もともとは米国株式市場で観察されてきたアノマリーです。
日本株でも年末年始年末にかけて株価が強含みやすい傾向が指摘されています。最近の分析では、四半期ベースで株価が上昇したケースの多くで、11月または12月のいずれかがプラスとなっているとのデータも紹介されています。
アノマリーは「必ずそうなる法則」ではありませんが、12月に独特の値動きが出やすい背景にはいくつかの要因が重なります。
機関投資家の「締め」の動き
まず、機関投資家にとって12月は決算に向けた「締め」の時期です。
決算に向けて運用成績を整えるためのドレッシング買いが行われたり、指数の構成や株価の変動に応じたリバランス(資産配分の調整)が集中し、需給に一時的な偏りが生まれやすくなります。
個人投資家の「税金を意識した売買」
一方で、個人投資家にとっては「その年の損益が確定する直前の月」です。
含み損のある銘柄を売って損失を確定させる「損出し売り」が増えやすく、こうした動きが短期的に売り圧力として働くことがあります。
ただし、業績に問題がないにもかかわらず税金対策で売られている銘柄は、年明けに需給が落ち着くと株価が戻ってくるケースも少なくありません。
決算期・権利取りが重なる日本特有の要因
さらに、日本では12月決算の企業も多く、配当の権利取りや、逆に権利落ち後の調整が絡むことで、短期的な値動きを大きくします。
「機関投資家のリバランス」「ファンドのドレッシング」「個人の損出し売り・NISA枠の消化」「配当・株主優待の権利取り」といったさまざまな動きが重なり、12月は他の月に比べて市場が揺れ動きやすいシーズンだといえます。
アノマリーとの付き合い方
こうした背景を踏まえると、「12月は上がると聞いたから買う」といった発想ではなく、「なぜそうなりやすいのか」という点を理解したうえで投資行動を考えることが大切になります。「その背景を理解したうえでどう動くか」を考えることだと思います。
例えば、サンタクロースラリーが意識されている時期は、すでに多くの投資家が「年末は上がるかもしれない」と期待している状態です。期待が先行して買われている場合には、材料出尽くしで反落することもあります。業績に大きな問題はないのに「税金対策の売り」や損出しで押し込まれた銘柄が年明けに戻ることもあります。
12月のアノマリーは、「みんなが同じような行動をしやすい時期」という人間心理を映す鏡のような存在です。だからこそ、単にパターンを追いかけるのではなく、自分がどの立場で、何を優先して動くのかを整理しておくことが大切なのだと思います。