はじめに
税制優遇制度として認知度が高まるiDeCoですが、やはり受取時の課税の仕組みについては相当の注意喚起が必要であると感じています。今回は、確定拠出年金を中心に四半世紀活動しているファイナンシャルプランナーとして改めて注意点をまとめます。
他の金融商品とは課税方式が異なるiDeCo
60歳以降に受け取るiDeCoの老齢給付は、金融商品で運用する仕組みであるにも関わらず他の金融商品とは課税方式が異なります。また任意加入の私的年金制度であるにも関わらず企業年金と同列で課税されるという特徴があります。
例えば、iDeCoに似た仕組みとして、個人年金保険があります。こちらも老後の備えとして保険料を積み立て、60歳などあらかじめ決めた年齢から5年や10年といった期間にわたり資産を分割して受け取ります。
近年は、契約者本人が投資信託などを用いて運用する変額保険もありますが、こちらの方がさらにiDeCoに近い仕組みといえるでしょう。
iDeCoと個人年金保険、拠出時の税金はどう違う?
仮に、個人年金保険で月々2万円積み立てたとします。支払った保険料は、「生命保険料控除」として所得から差し引くことができます。
ただ、生命保険料控除には上限があり、このケースであれば年間24万円の保険料のうち所得税で控除可能な金額は4万円に留まり、さらに住民税は28,000円となります。一方iDeCoは、掛金全額所得控除なので、所得税も24万円、住民税も24万円、課税所得から差し引くことが可能です。
年収600万円くらいの方の場合、控除のメリットは所得税で10%ですから、個人年金保険の税のメリットは4,000円、iDeCoは24,000円、住民税は一律10%ですから、個人年金保険の税のメリットは2,800円、iDeCoは24,000円となります。
仮に15年継続すると、個人年金保険の税メリットは102,000円、iDeCoは720,000円となります。生命保険料控除は、年間の支払保険料が8万円以上だと控除額は40,000円、住民税は28,000円と上限に達するので、iDeCoの掛金が大きくなればなるほどiDeCoに拠出することで得られる税のメリットは大きくなります。
変額保険は、iDeCoと同様、契約者自らが運用します。運用しているあいだ、税金は繰り延べされます。つまり運用商品を売買した際、税金を引かれることなく運用益すべてが次の運用に活かされる「複利的な効果」を得ながら資産を成長させることができます。
iDeCoと個人年金保険、受取時の税金はどう違う?
受取時ですが、個人年金保険は年金受け取りが基本です。60歳以降10年間にわたり資産を分割して受け取るといった具合です。この際雑所得となりますが、支払った保険料は経費として認められるので、いわゆる「もうけ」の部分に対して税金がかけられます。
あるいは、一時金として受け取ることも可能です。この場合、一時所得として、受取金額から支払った保険料を経費として差し引き、そこから50万円の特別控除を差し引きさらに2分の1した金額に対し税金がかけられます。
一方iDeCoの場合、一括で受け取ると退職金として扱われるため、受取額より退職所得控除が差し引かれ、さらに2分の1の金額に対し税金がかけられます。この時、個人年金保険の雑所得あるいは一時所得が「総合課税」となるのに対しiDeCoは「分離課税」なので、多くの場合より低い税率が適用されます。