はじめに

分割(年金形式)で受け取る場合の注意点

DC・iDeCoがどうしても退職所得控除を超えてしまう、あるいは退職所得控除を超える部分を可能な限り小さくしたい場合は、一部を「分割」で受け取ることにより、「公的年金等控除」を利用し課税を抑えることもできます。詳しくは以下の記事をご覧下さい。

参考記事:企業型確定拠出年金(企業型DC)、定年時に「損をしない」受け取り方とは?

ただし、公的年金等控除は老齢年金とDB(確定給付企業年金)も同じ枠を利用するため、老齢年金の受け取るタイミングを調整するなど予めの対策が必要です。

DBは定年後5年間、10年間、20年間などといった決まった期間で年金払いとなります。DCと異なり、自らが資金を運用するわけではないため金額が見えにくいところですが、定年前にしっかり情報収集をしておきたいところです。

公的年金等控除は、年収によって異なりますが、公的年金等以外の合計所得が1000万円以下の場合、年間60万円までなら非課税、それ以上になると段階的に控除額が増えそれを超えた部分がその他の所得と合算され課税されます。そして65歳以上になると年間110万円までは非課税、それ以上になると段階的に控除額が増えます。

DBは分割受取の期間が長ければその分受取総額が大きくなる傾向があり、何年で受け取ろうかと悩まれる方も多いです。また、そこにDCやiDeCoの分割受取も考慮するとどの組み合わせが良いのか分らないとおっしゃる方も少なくありません。

75歳の自分が「お金の心配なく暮らせるか」を基準に

筆者はお客様にお話をする際に、**75歳の自分がお金の心配をすることなく暮らせるかどうかを基準に資金計画を立てられてみては?**とご提案することが多いです。75歳といえば、後期高齢者、身体の衰えもあるでしょうし、認知症の心配も出てくる頃でしょう。

75歳以降の収支を考える際には、自宅で暮らす費用だけではなく、施設利用時の費用も目安にします。例えば、特別養護老人ホームの月の費用は、10~15万円程度と言われています。介護付き有料老人ホームとなるとさらに費用は上乗せされますが、仮に75歳以降の自分が最低必要な資金を月20万円と見積もったら、公的年金で賄えるかどうかをまず考えてもらいます。

一般的な会社員時代の平均年収が480万円程度と考えれば、65歳まで働くと老齢年金は193万円です。残念ながらこれでは、年間240万円の年金収入を確保することはできません。

しかし、公的年金を70歳まで繰下げると1.42倍に増額されるので年金額は274万円です。税金や社会保険料が10%程度と考えても、月20万円は年金収入として確保できるでしょう。これで基本的な生活費を賄えるということであれば、DBやDC・iDeCoは70歳までのつなぎとして考え計画を立てます。

退職金は「ゴール」ではなく「通過点」

退職金の受け取り方について、ご相談に来られる方は非常に多いです。ご相談の際に「ねんきん定期便」の持参をお願いし、税金も考えつつ、ご自身のこれからのライフプランを重視してご判断いただくことをお話しています。

退職金の使い道を定年前にしっかり考えることは極めて重要ですが、ここはあくまでも通過点です。判断基準はいかに税金を抑えるかというより、いかに退職後の長い老後に資金を枯渇させることなく活かすかであることを忘れてはいけません。

税金を考えれば、退職所得控除を最大限活用して一時金で受け取るが正解ですが、その資金をそのまま「預金」に寝かすのではなく、さらに活用を考えるべきだということです。

ある方は、NISAを活用して、もう少し資産運用を継続し、10年後からの取り崩し資金とされました。

ある方は、配偶者亡き後、高齢者施設の入居の一時金にあてるためと、終身保険の保険料に充てました。

ある方は、病気や介護に備え個人向け国債など流動性や安全性が高い金融商品で確実な運用を選ばれました。

ある方は、不動産投資や事業資金などに充て、お金が生まれる仕組みを作りたいとおっしゃいました。

ある方は、生涯現役で豊かに働ける自分を目指して、海外で見聞を広げると出発されました。

定年は人生のターニングポイントです。退職金をきっかけにこれからの人生を支えるお金としっかり向き合っていきましょう。

老後資金は失敗できない!あなたが今からできる資産形成の始め方、お金のプロに無料で相談![by MoneyForward HOME]

この記事の感想を教えてください。