はじめに
電力網の整備が加速、地熱発電関連株の出番が増える展開に

【電力・エネルギー】
2026年、間違いなく有望相場テーマの一つになりそうなのが、電力・エネルギーです。現在、日本だけでなく、米国や中国などでも生成AIの活用を目的としたデータセンター(DC)の建設ラッシュが起きており、それにともなって電力需要が増え続けているからです。
2020年以降、DCは右肩上がりで増え続けており、2023年に2兆7361億円だったDC市場は、2028年には5兆円を超えると試算されています。DCでは、大量のサーバー、ネットワーク機器が24時間365日稼働しているほか、機器がオーバーヒートしないように冷却し続ける必要があるため、DC稼働のための電力確保が急務です。あるDCの専門家によると、「小規模なDCでも、一般家庭1万世帯分に当たる3万キロワットの電力が必要」「新たにDCを建設しようとすると、電力会社に申し込みをしてから送電網や変電所を整備するのに早くて6年はかかる」とのこと。
現在、DCの8割は東京・大阪圏に集中しています。そのほうがDCのメンテナンスのための人員を送り込みやすいためです。しかし、今後はDCが「都市集中型」から土地の確保がしやすい「地方分散型」へシフトしていくことが予測されています。現在、DCの誘致に関して積極的で、かつ広大な土地を持つ北海道がDC建設の主力場所として注目されていますが、今後は東北や中国、九州、四国など、全国的にDC建設が広がる可能性があるでしょう。
米国では、新設したにも関わらず、電力の供給不足によって稼働できていないDCも出てきているとの報道もあります。日本ではこうした事態を避けるべく、発電所や変電所、電力網の整備が急ピッチで進められており、今後数年にわたって、電力関連銘柄には特需が発生することが予想されます。すでに、一部の電力関連銘柄は人気化していますが、2026年は発電所や変電所の機械、部品を手掛ける企業にも買いの手が伸びることになりそうです。
また、それ以外にも、再生可能エネルギー関連が物色される展開も予想されます。再生可能エネルギーに関して、高市早苗首相は「美しい国土を外国製の太陽光パネルで埋め尽くすことには“猛反対”」と発言するなど、現在のメガソーラー計画については明確な反対姿勢を打ち出しています。その点で、主要材料のヨウ素が日本国内で豊富に取れる「ペロブスカイト型太陽電池」に関しては、「国産エネルギー」として今後も研究開発と、本格普及に向けた動きが出てきそうです。風力発電については、これまで洋上風力事業を推進してきた三菱商事が重要プロジェクトから撤退するという逆風が吹いているため、2026年は苦戦するかもしれません。
一方、「マグマ大国」である日本で拡大しそうなのが、地熱を活用する「地熱発電」。地熱発電に関しては、同サイト内で12月4日に配信された「太陽光、風力発電に逆風が吹く中、期待される『地熱発電』関連株の可能性を徹底考察」の中で詳しく取り上げています。これまで、「調査・開発から商用化までのリードタイムが長すぎる」ため、長期間にわたって開発がストップしていた地熱発電ですが、2019年、22年ぶりに新規の地熱発電所が運転を開始しました。技術開発や政府の支援によって開発のリスクが減っていることに加え、日本が「資源大国」になり得る発電方法のため、2026年は注目度が急上昇しそうなテーマといえます。
政府は、地熱発電量に関して「2030年度中に1.5ギガワット(原子力発電所1.5基分、50~100万世帯分の電力)」という明確かつ具体的な目標を掲げていることから、今後数年のうちに「地熱発電元年」が訪れる可能性が高まりつつあります。これまで、エネルギー関連銘柄は「政策の後押しなどで瞬間的に買われるものの、相場が長続きしない」のが常でしたが、今後は地熱関連株の出番が増えると同時に、相場の息も長続きするかもしれません。(後編に続く)
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