はじめに

共有名義不動産の整理・解消方法

ここまで見てきたように、共有名義の不動産は、共有することのメリット以上に、デメリットやリスクも大きな状態といえ、できる限り共有名義にはせず単独名義で所有することが重要であると筆者は考えています。この観点では、何らかのきっかけから共有名義になっている不動産がある場合には、共有者全員が健康で良好な関係であるうちに、共有者の持分を共有者同士で売買して、1人の所有者に持分を集約しておくことをお勧めしています。

もちろん、権利保全の観点や、節税等のメリットを重視して、共有名義にしているケースもありますので、そういった計画的な共有名義まですべてを不適切とすることはできません。しかし、どんなに今の関係性が良好であっても、この先の健康状態や人間関係が変化する可能性はある以上、先に挙げたようなリスクを完全に排除することはできない側面もあります。

そこでここからは、共有不動産において、相続や離婚等をきっかけにして、不動産の売却・処分を目指す場合の選択肢についてご紹介します。

①合意による共有物の売却・分割

最も円滑な解決方法は、共有者全員の合意によって売却金額や売却条件を決めて、不動産を売却し、その売却代金を分割して受け取ることです。換価分割とも呼ばれます。これにより、現金化して自由に使える資金となりますので融通性が高い解決法となります。しかし、共有者間で価値基準にズレ等があると、全員の合意を得ることが難しく、売却時期や売却価格、分配割合で揉めることも多いのが現状です。

そのほか、代償分割といった方法もあります。代償分割とは、共有者の一方が不動産の全部または一部を取得し、その代わりに他の共有者に現金や他の資産を支払う方法です。先ほど一例として挙げた「良好な関係のうちに、1人の所有者に持分を集約する」ことがこれにあたります。例えば、離婚をきっかけに持家に住み続けたい一方の側がこの方法を利用することが多く、生活の継続性を保ちながら財産分与を終結させます。ただし、代償金の支払い能力や評価額(持分を手放す側に、持分を取得する側が支払う金額等)の適正が問われる仕組みであり、専門家の査定や助言が欠かせません。

さらに、あまり多いケースではありませんが、現物分割という方法もあります。これは、例えば2人で共有していた200坪の土地を2分割して、100坪ずつ、それぞれの土地を所有します。これにより、一人は自宅を建て、もう一人は月極駐車場にするといった使い方を実現することもできます。ただし、これは分割してもそれぞれの土地の資産価値が一定程度確保できる土地に限って取りうる選択肢であり、例えば物理的な分割のできないマンション、変形している土地、使いみちのない状態になっている山林や農地等になると、この分割方法はできません。

②共有物分割請求訴訟

共有者間で、売却等に向けた合意が得られずに、八方塞がりとなった場合は、共有物分割請求訴訟を裁判所に起こすことが可能です。裁判所は、先に挙げたような換価分割、代償分割、現物分割といった方法で共有状態を解消するための判決を下します。

これによって、半ば強制的に共有状態を解消することができますが、訴訟に要する時間と費用もかかるほか、関係者が負う精神的苦痛も生じうるため、選択には慎重さが求められます。

離婚にともなう住宅ローンの問題

夫婦共有名義の住宅ローンは、離婚後の不動産売却や所有権としての共有名義の処理と並行して、最も複雑な問題のひとつです。ローン名義人の変更や完済、借り換えが必要となる場合も多く、そのための金融機関の審査は簡単ではありません。財産分与で単独名義に移行しても、ローン残債がある限りは金融機関の承認が必要なため、離婚後も名義人の変更や債務整理で紛争が続くことも考えられます。

こうした点も踏まえ、離婚の協議段階からローン対応を専門家に相談し、計画的に進めることが負動産トラブル回避の鍵となります。

共有名義と名義変更に関する実務上の注意

不動産の所有者名義の変更は法務局への登記申請により行われ、これには正確な書類作成が必要です。そして、その際に添付する遺産分割協議書や離婚協議書などを根拠に名義変更を行いますが、不備や曖昧な合意内容は登記申請時に差し戻されることがあるため専門家の支援が不可欠です。

また、換価分割などによって親族間で単純名義への変更を進めた場合、一般的な売買と異なり、見落としがちな贈与税や譲渡所得税など税務面の影響も考慮しなければなりません。

対策と実行は早めに

共有名義不動産の問題は、単に財産としての不動産の処理にとどまらず、家族間の感情や信頼関係、そして財務と法務が複雑に絡み合う課題です。

法律制度の理解不足や専門家相談の遅れは、後々のトラブルや大きな経済的損失に繋がりかねません。負動産化を防ぐためには、関係者間での話し合いが落ち着いてできる早期段階から十分な対話と専門的な助言を取り入れ、具体的な処理計画を策定することが、最も確実な解決策となるでしょう。

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