はじめに

日本の資産運用ビジネス、とりわけ投資信託の運用において、新規参入する資産運用会社の数が増えません。かつては免許制のもと非常に厳しい参入条件を課されていましたが、現在は登録制に切り替わり、条件は緩和されました。それにも関わらず、なぜ金融資本系以外の資産運用会社は増えないのでしょうか。その背景にある「構造的な理由」について解説します。


金融機関の資本なしに経営されている資産運用会社は?

ご存じの方は多いと思いますが、日本で投資信託を設定・運用している資産運用会社の多くは、銀行や証券会社、保険会社といった金融機関からの出資を受けています。さらに言えば、これら金融機関の子会社であるケースもあります。あるいは、海外に拠点を置く大手資産運用会社の日本法人も少なくありません。

対して、金融機関の出資をまったく受けずに経営を成り立たせている「独立系」の資産運用会社は、ごく少数と言えるでしょう。思いつくところでは、さわかみ投信や鎌倉投信の株主構成には金融機関が入っていません。また、スパークス・グループは株式を上場しているため、株主構成の上位には複数の金融機関や機関投資家の名前が見られるものの、実質的には創業者である阿部修平氏が52%の株式を保有しており、強いオーナーシップが発揮されています。

しかし、このように創業者が強いオーナーシップを発揮するか、もしくは金融資本をまったく受け入れずに経営を成り立たせている資産運用会社は、ほとんどないといっても良いでしょう。

過去を振り返ると、完全独立資本としてさわかみ投信が1996年に設立された後、同じく独立資本で創業したコモンズ投信が設立されたのは2008年8月のことです。レオス・キャピタルワークスは2003年に現商号に変更していますが、公募の投資信託を設定したのは2008年10月でした。要するに、さわかみ投信がスタートしてから、同じ独立資本の資産運用会社が誕生するまでに12年もの歳月を要したのです。

そして、直近で誕生した独立系投資信託会社であるfundnote株式会社は2021年8月に設立され、公募の第一号ファンドが設定されたのは2024年12月です。fundnoteにも、金融機関の資本はまったく入っていません。

独立維持を阻む「重い経営コスト」

このように時々、独立系資産運用会社は誕生するのですが、やがて金融機関や事業法人からの出資を受け入れるケースが多く見られます。例えば、レオス・キャピタルワークスは2009年にISホールディングス傘下に入った後、現在はSBIグループのSBIグローバルアセットマネジメントの子会社となっていますし、コモンズ投信には丸井グループが3割強の出資をしています。

理由はさまざまですが、今の日本の資産運用業界において、完全な独立採算で経営を維持するのは、至難の業です。そこには2つの理由が考えられます。

第一の理由は、経営コストが非常に重いことです。金融庁からの認可を得るためには、資本金・純資産として最低5000万円以上が必要であるほか、運用の専門家、コンプライアンスの専門家を確保するなど、十分な人的構成が求められます。

また、運用がルール通りに行われているかどうかをチェックするためのシステムや、基準価額を算出するための計理システム、法定書類作成システムなどの導入投資に加え、そのシステムを運用し続けるのにも、莫大なコストがかかります。

こうしたミドル・バックオフィスを機能させるためには、最低限の人員を雇用しなければなりませんし、当然そこには人件費が発生します。立ち上げたばかりで多くの運用資金が集まらなければ、そこから得られる信託報酬も微々たるものとなり、資本を食いつぶすことになります。資本には限りがありますから、資金が減少すれば、金融機関や事業法人からの出資を仰がざるを得ず、結果として独立資本を維持できなくなるのです。

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