はじめに
SBI証券がiDeCoの商品見直しを予定しています。今回は、「2026年12月に予定されている『iDeCo制度改正』に向けて、お客さまの長期的な資産形成にふさわしい商品ラインナップへの見直しが必要」と発表されたその内容を紹介します。
なぜ今、商品を見直すのか?
ネット証券大手のSBI証券は、確定拠出年金が「iDeCo」と呼ばれる以前より個人型確定拠出年金を取り扱う数少ない金融機関であり、「個人型確定拠出年金における先駆者」ともいえます。
現在iDeCoは公的年金に加入している被保険者であれば原則加入ができますが、2017年の改正前は、自営業者と企業年金のない会社にお勤めの会社員のみが加入できる制度でした。
また、個人型確定拠出年金を取り扱っている金融機関は非常に少なく、SBI証券が代表的な運営管理機関の一つであったと記憶しています。当時のSBI証券のプランでは、67本もの運用商品がラインナップされており、「知る人ぞ知る」マニアックな制度といったイメージがありました。
そんな個人型確定拠出年金は、2017年の制度改正で大きな転機を迎えます。iDeCoの加入対象者が公務員や専業主婦などにも大幅に拡大したことを受け、iDeCoを取り扱う運営管理機関が一気に増えました。
楽天証券が、運営管理機関の費用を最初から0円と謳ったことを皮切りに、世間からの手数料に関する要求は厳しくなりました。また、それぞれの運営管理機関のプランを一覧で紹介するサービスが充実することにより、運用商品のラインナップにも注目が集まりました。
同時期に施行された法改正の流れを受けて、運営管理機関にはより一層の加入者保護と適切な商品提供が求められるようになり、その流れの中で運用商品は「多ければよい」のではなく、加入者が合理的に選択できる範囲、実務上の目安としておおむね35本程度が上限と整理されていきました。
そうなると67本ものラインナップをそろえていた老舗であるSBI証券も運用商品の見直しをせざるを得なくなり、2023年までに商品数を35本以内にするという諸手続きに入ることになりました。67本から35本以内に運用商品を減らすのは、そう簡単な手続きではありません。加入者にその旨合意するかの判断を仰がなければならず、それなりの時間と手間がかかったはずです。
そうして生まれたのがSBI証券の「オリジナルプラン」です。運用商品数縮小の手続き中では新規加入者も集まりにくかったのではないかと推測しますが、2018年に新たに「セレクトプラン」が発表され、結果的にオリジナルプランは2021年をもって新規受付が停止されました。
オリジナルプランの運用商品が67本から35本以内に縮小される過程において、新規積み立てができなくなる「商品除外」が発生しました(「iDeCoの商品除外」については以前楽天証券の運用商品見直しの記事を参照して下さい)。
参考記事:楽天証券でiDeCoを利用している方は要注意! 9本の投資信託が除外でどうなる?
楽天証券、iDeCoの商品入替が再度発表に 除外商品の選考基準とは?
商品が除外されると、新規の積み立てができず、継続保有のみが可能となるため、運用の継続性が絶たれてしまったと感じる方も多く、筆者のもとにもそのままオリジナルプランで継続するのか、セレクトプランに移るのか、あるいは運営管理機関を変えるべきかといったご相談が多く寄せられました。
不便を感じた古くからの加入者がいた反面、加入条件の拡大によってiDeCoの名前が広がり、普及が進んだことにより、多くの方が新たにiDeCoに加入するようになりました。これにより、運営管理機関の競争が激化し結果、手数料の大幅な引き下げ、ラインナップされる商品、特に投資信託の情報開示により信託報酬に注意が向けられたこともあり業界全体のコスト意識も高まりました。
現在のSBI証券の「セレクトプラン」は、このような時代の変化に対応した商品ラインナップであったと考えると、今回「次の制度改正」を見込んでさらに運用商品ラインナップをブラッシュアップするという発表は興味深いものとなりそうです。
次の制度改正というのは、2027年に予定される掛金上限額の引き上げと加入可能年齢の拡大を指しているのでしょう。自営業者の掛金上限額は月75,000円に、会社員・公務員は企業年金等の掛金とiDeCoの掛金合計が62,000円に引き上げられる予定です。もちろん企業年金等がない会社にお勤めの会社員の掛金上限額は62,000円です。
加入可能年齢は20歳から70歳までに拡大予定ですから、実に50年間にわたります。これまで公的年金の被保険者であることが加入条件であったところ、60歳以降については老齢基礎年金を繰下げていることと「iDeCoを活用した老後の資産形成を継続しようとする者」へと変わり、年金加入が終了しても継続が可能になります。
結果として、20歳で国民年金に加入すると同時にiDeCoを始め、その後就職、定年後も70歳までiDeCoに加入する人がこれから誕生すると考えると、数千万円から1億円超の資金の長期運用の受け皿をiDeCoが担うことになります。